HOW TO SCAN THE WORLD ── 世界をくまなく、そして注意深く、「見る」「触れる」「遊ぶ」|BIEN × 石毛健太 × 髙木遊
現在、金沢21世紀美術館で開催中のSCAN THE WORLDによる展示〔NEW GAME〕について、STW発起人であるBIENと石毛健太、そして同展示の担当キュレーターである髙木遊に話を聞いた。
HOW TO SCAN THE WORLD
スキャン・ザ・ワールドの方法
Go outside
家の外に出ること
Look carefully
注意深く見ること
Touch and Feel
触れること
Picture what has been and what will be
これまでとこれからを想像すること
Notice the difference between day and night
昼と夜の違いを知ること
Bring home images
イメージを持ち帰ること
Keep walking
歩いて
Take it easy
気楽に
現在、金沢21世紀美術館で開催中のSCAN THE WORLDによる展示〔NEW GAME〕。
会場空間内に吊るされた、いささか不気味なほどに巨大な石板には、この〔新しい路上のゲーム〕を方向づける8つの〔ルール〕が、厳めしく刻まれている。
9月30日、会期初日前日の金沢で、SCAN THE WORLDの発起人であるBIENと石毛健太、そして本展の担当キュレーターである髙木遊に話を聞いた。
取材・文/辻陽介
ヘッダー/《SCAN THE WORLD [STAGE: COLLECTIVE BEHAVIOR]》2018 photo by Kazuki Shibuya
アペルト17 SCAN THE WORLD [NEW GAME]」2022、インスタレーションビュー、金沢21世紀美術館 |Photograph by KIOKU Keizo|提供:金沢21世紀美術館
新しい「遊び」の発見
DZ さて、本来なら担当キュレーターの髙木遊さんも一緒にインタビューさせてもらう予定だったんですが、髙木さんがどこかに行ってしまっているので、先に始めてましょう(笑)
どこから聞いていくのがいいか。髙木さんが戻ってきたらとりとめもなくなりそうなので、まず最初にSCAN THE WORLDの制作、作品、展示に対する僕個人の感想と、関心のあるポイントを話しておこうと思います。
といっても今回の展示、というかプロジェクトはまだ始まったばかりということなので(本取材日はオープニング前日の9月30日)、2021年に代々木TOHで見させてもらった展示(※2)の感想になるんですが、あの展示、率直にすごく面白かったんですよね。
※1 金沢21世紀美術館アペルトで開催中のSCAN THE WORLDの展示〔NEW GAME〕2023.03.19まで。
※2 SCAN THE WORLD [STAGE: TELEPHONE GAME] 2021.08.22~09.05
あの時の展示では、お二人がハンディスキャナーを持って街に出て、各所でスキャンした画像を起点に行ったあるゲームの模様が、会場内にインスタレーションとして展示されていました。そのゲームというのが [STAGE: TELEPHONE GAME]というゲームで、お二人が参加希望者にインスタ経由でお題としての画像を送り、参加者はその画像と似たイメージの対象を街中でスキャンしインスタグラムにアップしていくという、そういうゲームでした。
TOHでの展示ではその [STAGE: TELEPHONE GAME]を通じて集められた画像群が展示されていたんですが、なんというか、ちょうどズレを伴いながら進行していく画像の伝言ゲームのようで非常に面白かったんですよね。僕はそのゆるっとしたゲーム形式の制作に、何か新しい、それでいてどこか懐かしい、コミュニケーションの形を見たようなが気がしたんです。
SCAN THE WORLD [STAGE: TELEPHONE GAME]_RULE 2021
ちょうどあの時期はコロナ禍の只中で、人が物理的に集まる機会というのがまだ少なかった。そうなると、どうしてもオンラインを介したコミュニケーションの割合が増えてしまうわけですが、オンラインのコミュニケーションというのは(ゲームなどを除いて)、基本的にとても「強い」んですよね。物理的に対面していないぶん、否応なしに言葉に頼らざるを得ず、するとコミュニケーションがすごく意味的に偏っていく。普段、顔を合わせている時というのは、実は僕らはそれほど意味的なコミュニケーションってしてないと思うんですが、メッセージやZOOM、あるいはSNSを介したような身体性の伴わないコミュニケーションになると、どうしても言葉に、それも意味のある言葉に頼りがちになり、それゆえコミュニケーションが強くなってしまうんです。
コロナのせいかは分かりませんが、SNSの雰囲気も以前に増して非常にギスギスした感じになっていた気がします。言葉をかわせばかわすほど相違点ばかりが浮き彫りになってしまって、人と人とが意味によってどんどん分断されているような印象もありました。そんな時局にあの展示を見たので、ありていに言えば、すごく清々しかったんです。
[STAGE: TELEPHONE GAME]においては、コミュニケーションのためのツールが街でスキャンされた画像に設定されてるわけですけど、その画像も特になんの意味もないような画像なんですよね。その意味のない画像と似た画像をそれぞれがそれぞれの街で、それこそ海外からの参加者も多かったですが、思い思いにスキャンしてくる。ただ、それだけ。ものすごくグローバルにコミュニケーションが展開しているのに、コミュニケーションそのものはすごく弱い。広くつながってはいくんだけど、つながり方が非意味的で部分的、かつ遊戯的なんですよね。
SCAN THE WORLD [STAGE: TELEPHONE GAME] 2021 Photograph by TAKEHISA Naoki
僕個人の感想としては、まずそこにシンパシーを感じた、というところがあります。人と人とが関わるって基本的にはそんな感じでよかったはずだよね、と(笑)
と、まあ他にも、BIENさんと石毛(健太)さんという、近そうでいて対照的にも見える二人が組んでいることを含め、SCAN THE WORLDに対しては色んな面白さを感じてはいるんですが、とはいえ僕ばかり喋っていてもしょうがないので(笑)、あらためて二人に話を聞いていきたいです。
では最初に、そもそもSCAN THE WORLDというプロジェクトはどういう経緯で始まったんですか?
BIEN ありがとうございます(笑)。僕らの始まり…そうですね。まず、スキャナーとの話でいうと、もともとZINEを作ったりすることもあったので以前から普通に使ってはいたんですよね。ただ基本的にはスキャナーって室内で使うものじゃないですか。で、ある時に石毛と話してて、このスキャナーで屋外の色んなテクスチャをスキャンしてみたら面白そうじゃないって話になったんですよ。調べたらハンディスキャナーっていう持ち運びできるハンディタイプのスキャナーがあるらしいってのも分かって、それでスキャナーを持って外に出てみたっていうのが始まりですね。
石毛健太(以下、石毛) ヤマダ電気にハンディスキャナー買いに行った足でそのままスキャンしに行ったんだよね(笑)
BIEN そうそう。本当にノリで。それでいざ外に出て、まあ面白いテクスチャを探して色々なところをスキャニングしてみたんですけど、これが普通に面白かったんです。お、これはストリートにおける新しい遊び方になるんじゃないかって思って。実際に街の各所をスキャンしてる姿って傍から見るとグラフィティしているのと似たような見た目になるんですよね。
《SCAN THE WORLD [STAGE: COLLECTIVE BEHAVIOR]》2018 photo by たまえ
石毛 ライターの人たちは街を歩いている中で面白そうな場所を見つけて、そこにグラフィティを書くわけじゃないですか。その目線だけで言えば僕らも近くて、ひたすら街を散策して、人目につかなそうなところにある面白いテクスチャを見つけていく。そして、それをスキャンしていくんです。
BIEN そこまでは本当にグラフィティと同じなんですよ。ただ、やっている行為そのものは実は真逆。グラフィティは街になんらかの痕跡を残す行為ですけど、僕らは街自体にはなんにも残さないんです。むしろ街から画像のデータをもらってくる。で、そのデータを使って遊ぶんです。僕たちが元から好きだったストリートのカルチャーとも接続しているんだけど、ちょっと違う。その転換が面白かったんです。
DZ なるほど。じゃあ最初はアートプロジェクトというより、純粋に新しく見つけた「遊び」だったんですね。
石毛 そう、これは楽しいってなって(笑)
BIEN だから、この遊びを作品にしようってなった時はすごい悩みましたね。一応、今までにSCAN THE WORLDとしては2回、さっき辻さんが話してくれたTOHと、あと2018年にFL田SH(フレッシュ)で展示をやらせてもらったんですけど、それぞれすごいアウトプットの仕方については考えましたね。で、今回、ここ金沢21世紀美術館でやるってなった時に、作品を展示して見せるというよりも、ここを拠点にみんなでこの遊びをしたいっていう風に思ったんです。
石毛 まあ、それはTOHの展示の時にも意識としてはあったんですよね。この遊びの楽しさはやっぱり実際にやってもらわなきゃ伝わらないと思って。ハンディスキャナーで路上でスキャンしていると身体の捻れや捩れが画像に反映されるんですよ。それこそ数人で組体操みたいなポーズを取って高さのある場所のテクスチャをスキャンしたりする場合、体勢がきついからスキャナーを持つ手が安定しないわけですよね。その不安定な身体状況がちゃんと画像に投影されるんです。でも、その不安定さがまたかっこよかったりする。つまりスキャンする人や状況によって色んなスキャンができあがるんです。だから、TOHの展示では事前にスキャナーを海外の友達に送ってこの遊びを体験してもらい、その結果を展示したんですが、今回はさらにもっと開いて、完全に一般参加型にしてゼロから作ってくことにしたんです。
《Image from STW [STAGE: COLLECTIVE BEHAVIOR]》2018
BIEN 今まではゲーム性を入れつつも、どうにか作品をつくって展示という形式に整えてきたんだけど、今回はもっと過程から見せちゃおう、と。ワーク・イン・プログレスのまま公開しちゃって、どんどん変化させていこう、と。で、こんな感じの空間になってるわけです(笑)
アペルト17 SCAN THE WORLD [NEW GAME]」2022、インスタレーションビュー、金沢21世紀美術館 |Photograph by KIOKU Keizo|提供:金沢21世紀美術館
石毛 僕らの希望としてはスキャンがスケボーやグラフィティみたいな街中での遊びの一つになってくれたらいいなって思ってるんですよ。で、ここはそれを実現するための拠点。感覚としてはハチ公前みたいなもので、ようするに待ち合わせ場所なんです。ここを拠点にみんなで集まって、外に出かけてスキャンして、その画像を最後、ここに戻ってアップロードして、みたいな。だからベンチもあるんですよ。
BIEN そう、ここは公園なんです。金沢21世紀美術館内の公園(笑)
DZ (笑)。ようするに、新しい遊び見つけたからみんなにシェアしたいってことですよね。
BIEN そうです(笑)
グラフィティとはまた違う「スキャン」独自のニュアンス
DZ 動機としてめちゃくちゃシンプルでいいですね(笑)。ただ、スキャンっていうのは確かに面白い概念ですよね。石毛さんもステイトメントに書いてましたけど、僕も取材前にスキャンという言葉の語源を調べてみたところ、「電子機器に取り込む」っていう今そうと認識されている意味の他に、「よじのぼる」だったり「世界をくまなく見る」だったりといった色んな意味があるらしい。そうかと思えば「軽く見流す」みたいな逆の意味も持っていたりする。あらためてSCAN THE WORLDっていい名前だなあ、と(笑)。でも、そういったコンセプト的な部分は後からついてきたものなんですね。
石毛 そうですね。今回も会場の下見に来た時に、BIENと何を作ろうかって話してて、まあ一回、抽象化されたテーマみたいなものを立てとこうってなって、それでスキャンの語源なんかを初めて調べたりしてみたんです。そしたらめっちゃ面白かった。元々、SCAN THE WORLDというのはBIENがつくった名前なんだけど、その時はただノリだったんですよね。深く考えてない。活動をしながら徐々に言葉の持つ広がりに気づいていって、僕らの活動もまたそれに導かれていった感じですね。
BIEN 最初は本当になんにも考えてなかったですから。さっきも言ったようにただのノリで始めたんで(笑)。まあ、遊びながらスキャンって行為の面白さに気づいていったんです。その面白さとしては、たとえば街をスキャンするって言った時、まず近い行為として連想するのは普通のカメラ撮影ですよね。カメラも街から写真を取り込んでいくわけですけど、カメラの場合は撮影にあたって対象との距離が必ずあるんですよ。そこに大きな違いがある。スキャナーの場合はスキャナーを対象に触れさせなきゃいけない。つまり僕たちが対象の間近まで接近しなきゃスキャンできないんです。だから、さっき石毛が話していたみたいに画像に身体の痕跡が残るんです。
《SCAN THE WORLD [STAGE: COLLECTIVE BEHAVIOR]》2018 photo by たまえ
これはTOHの [STAGE: TELEPHONE GAME]の時にすごい感じたんですけど、僕らがスキャンしたイメージを元に、たとえばイギリスの友達とかがイギリスでそれと似たなんらかのテクスチャをスキャンして画像を送ってくれるわけですよね。僕らはその送られてきた画像を見るわけだけど、まあその画像から色々と想像しちゃうわけですよ。あいつこんなポーズでスキャンしてたんだろうな、とか。画像そのものはよく分からないものでしかないんだけど、そこには画像の外部の情報が大量に含まれてて、それをあれこれと読み取っていく作業がすごい面白いんですよね。
石毛 そうそう。それがスキャンならではの魅力なんです。ただ、実は今回の〔NEW GAME〕では、スキャナーじゃなくてもゲームに参加できることにしたんです。チュートリアルではiPhoneでの撮影もOKにしてる。それはスキャナーを持ってない人も参加できるようにするためだけど、その代わり写真を撮影する時に対象物に手を触れてなきゃいけないってルールを設けていて。そうすることでスキャンの身体性を担保してます。
今回は会期中に徐々にゲームの種類が増えていくシステムにしてて、まだ全貌は明かしてないし、なんなら僕らも決めきってはいないんだけど、ゲームによってはなんならもう画像じゃなくてもいいバージョンもありなんじゃないかと思ってます。たとえばICレコーダーを持って街に出てもらって、街中のオブジェクトをなんでもいいから手で叩いた音を録って送ってもらう。それを集めて一個の音を作ったりするのも面白いんじゃないかなって。
BIEN スキャンって言葉を広く捉えていくと、別に視覚表現にこだわらなくてもいいのかなとも思えてきたんですよね。まあ、これから色んな遊びを展開していこうと思ってるところです。
DZ 楽しみです。話を聞いていて、スキャンというのはストリートで遊ぶ上での基本的な姿勢を指し示す概念だとも言えるのかなと思いました。たとえばグラフィティってその存在を意識しだした瞬間から街の風景が変わるものじゃないですか。それを街をグラフィティという観点からスキャンしてるんだと言うことだってできるんじゃないかな、と。
石毛 そうですね、まさに。
BIEN ただ、グラフィティや他のストリートの遊びとはまた違う、スキャンという言葉独自のニュアンスもあって、僕はそのニュアンスにちょうどよさを感じてるんです。僕はずっとストリートの文化が好きで、それこそかっこいいライターの先輩たちなんかに憧れてきたわけですけど、僕自身はそこまでハードにそれをやってきたわけじゃない。ハードにやるにはそれなりの覚悟も必要ですからね。そこまでの覚悟はないけど、そういう遊びが好きという、まあ半端な感じ。そんな僕なりに制作をしていくうちに自然にできた、ストリートで遊ぶためのひとつの方法がスキャンだったんです。
ストリートっていうとやっぱりヴァンダリズムのイメージが強いじゃないですか。その点、スキャンって家で使ってたスキャナーを外に持ち出してする遊びで、ある意味で家遊びの延長みたいな感じもある。言ったらナード的な感じ。ナードがナードのまんま、気を張らずにストリートにコミットできる。そこもスキャンの重要な面白さの一つなんですよね。
石毛 言っちゃえば路上観察なんですよ。そこにはライター的視線もあれば、赤瀬川原平のトマソン的な視線もある。BIENが言ったみたいにナード的なノリもある。僕個人としては、街のこれまでとこれからをスキャンを通じて探しているような感覚もある。多分、人それぞれに楽しみ方があるんですよね。ただスキャンという目線をインストールすることで、少なくとも街の見え方がガラっと変わる。だから、是非とも皆さんに参加して欲しいんですよね。
どこでもいい、どこでもできる、だから面白い
DZ とりあえず、僕もその目線をインストールしてみようと思ってます(笑)。と、ここで少し話を戻したいんですけど、2021年のTOHでの展示の時の [STAGE: TELEPHONE GAME]、あの展示であのゲームを展開しようと思った理由はなんだったんです? 最初に話したように、僕はあのゲームがすごい面白かったんですよね。世界の各都市から画像が集まってきていて、どことなく絵葉書のようなんだけど、絵葉書みたいにローカリティに重点が置かれてるわけでもない。パリからの画像だとしてもエッフェル塔が写っていたりはしないわけです。あのルール設定はどのように?
SCAN THE WORLD [STAGE: TELEPHONE GAME] 2021 インスタレーションビュー Photograph by TAKEHISA Naoki
BIEN まずインスタとかSNSを使いたいっていうのがあったんですよね。僕はフルクサスのメールアートとかが元から好きで。フルクサスの場合は手紙のやりとりそのものが作品になってたりするわけだけど、今だったらSNSじゃないですか。ただSNSをうまく使った美術作品って今のところそんなにない。それでInstagramでゲームを展開してみようとなったんです。
あの時のルールは、課題となっているスキャン画像をインスタのストーリーにSCAN THE WORLDをメンションしてアップするというもの。SNSの場合、普通のメールと違って開かれてるから誰でも見れるじゃないですか。ただ、ルールを知らない人にはなんのこっちゃか分からない画像がただ流れてる形になる。公開されてるんだけど、あるコードを共有していないと、何が起こっているのか理解できない。その現実の裏で進行していく感じが面白いかなと思ってそういうルールにしたんです。
DZ ストリートをSNS空間へと拡張していくようなイメージですね。実際にやってみて手応えはどうでした?
BIEN [STAGE: TELEPHONE GAME]からはいろんな気付きを得ましたね。たとえばレンガ。僕らがお題として出した画像の一つに東京のレンガの壁をスキャンしたものがあったんですけど、レンガの画像にはズレがほとんど生じないんですよね。ああ、レンガは世界のどこにでもあるんだなあと思ったり。
石毛 そうそう、他の画像はどんどん読み替えられて、まったく違うものになっていくんだけど、レンガだけは変わっていかないという。ある意味、レンガってモダニズムの象徴のようなもので、それが伝播していったところには必ずあるんです。そういうこともゲームの中で気付かされましたね。
SCAN THE WORLD [STAGE: TELEPHONE GAME] 2021 インスタレーションビュー Photograph by TAKEHISA Naoki
DZ 世界中の都市において普遍的に共有している部分と逆にズレている部分が両方見えてくるというのは面白いですね。しかも、そのズレが別に問題にならないというのもいい。あ、そうなんだ、くらいのズレ。
石毛 僕ら自身、差異を特に強調してないですからね。海外の友人たちから送られてくる画像にも地域性みたいなものはあまり感じられなくて。基本、身近にありふれているもののテクスチャが多かったですね。
BIEN それぞれが慣れ親しんでるものが多い印象でしたね。
石毛 一応、送ってもらう時にスキャンした画像にあわせて、引きの写真も送ってもらったりしていて。たとえばレンガの画像なんかも、その画像だけ見ると東京のレンガと変わらない普通のレンガのテクスチャなんだけど、引きの写真で見るとその背景はめちゃくちゃ南国だったりして(笑)
BIEN そうなんだよね。キュって寄ってくと全部一緒になってく。
DZ 面白い(笑)。実際、僕らもこうやって向き合ってると見た目もぜんぜん違うバラバラの個人だけど、分子レベルまでクローズアップしたら個体の違いなんてほぼほぼ分からなくなるわけで。
石毛 そうそう。今回も金沢でSCAN THE WORLDやるぞってなった時、最初はちらっと、いわゆる現代アート的な手法でこの土地の地歴をリサーチして、地域性に寄り添ったような展開をするって考えも浮かんだんです。でも、なんか違うなって思って。ぶっちゃけると、どこでもいいんですよ。この遊びはどこでもやれるからこそ面白いんであって。
あと、あそこにあるあれ、僕らのワークスペースなんですよね。あのワークスペースの下には車輪がついていて、ワークスペースごと移動できるようになってる。実際、会期中はゲームのルールに合わせて会場内を移動させていこうと思ってるんですが、それ以上にこの車輪は僕らは場所を選ばないという態度の表明でもあって。ある種、ノマド的な感じでもあるんです。
アペルト17 SCAN THE WORLD [NEW GAME]」2022、インスタレーションビュー、金沢21世紀美術館 |Photograph by KIOKU Keizo|提供:金沢21世紀美術館
DZ ただ、そうした超場所的なまなざしによって逆に発見される金沢らしあがあるんじゃないかなって気もしますね。金沢21世紀美術館の近くにはそれこそ鈴木大拙館がある。僕もさっき初訪問してきたんですけど、僕が前から好きな大拙の言葉に「個己即超個己、超個己即個己」というものがあるんですよ(『日本的霊性』)。個の特異性はその極点で個を超越する。一方で個とはそうした超越の先にこそ見出されるものでもある。そういう風に僕はこの言葉を理解してるんですが、場所というのもまた同じなんじゃないかという気がしますね。
石毛 そうですね、なんか発見できるだろうって気がしてます。僕は普段から場所や土地をテーマに作品作ってるんですけど、そういう意味ではSCANでの活動も地続きなんですよね。
石毛健太「アイオーン」2020 インスタレーションビュー
DZ 石毛さんは普段のソロの制作のとき、ニュータウンみたいな均質化の象徴みたいな場をモチーフとしつつ、そうした無個性とされている場がもつ個性や特異性を探っているように僕には見えてたんです。一方でBIENさんはストリートのアート表現、たとえばグラフィティにおけるライターの個を示すサインであるタギングなんかにインスパイアされつつ、それを無造作な線へと解体していくことで普遍的で匿名的な文様へと昇華させていってるように見える。その二人が揃ったというのが面白いんですよね。まさに大拙の言葉「個己即超個己、超個己即個己」。二つの方向軸が交差しながら循環していくというのが、SCAN THE WORLDの魅力の一つであるように思います。
BIEN《DUSKDAWNDUST》2021 Photograph by TAKEHISA Naoki
公園のようだけど公園ではない
(ここで本展覧会の担当キュレーターである髙木遊氏が唐突に現れる)
髙木遊(以下、髙木) ちょっと聞いてもいいですか? 僕はこの二人と違って街で遊ぶっていう感覚がもともとまったくなくて、まさにいま二人からそれを学ばせてもらってるところなんですけど、一方で現代アートの世界には「街に出なければいけない」みたいな感覚が切迫したものとしてある気がするんですよね。そうしないとすり潰されちゃうとでも言わんばかりに。そういう意味では今回は元から街側に寄っていた二人にホワイトキューブをあてがってみた形になるわけだけど、そこらへんについて二人はどう思ってるんだろう?
石毛 さっきもちょっと近い話をしたけど、今回、僕らはここを公園と見立ててるんですよね。実際、ここは無料展示ゾーンで、時間内であれば誰でも入れる。パブリックスペースなんですよ。
DZ 公園のようだけど、美術館の内部でもある。中間的なエリアですよね。
BIEN そうなんです。それがカッコいいことなのかは分からないけど、僕たちがやる場所はそこなんだろうなという気がしてます。
髙木 ただ、結構、暴力的な空間にはなっていますよね。普通、外の人たちをホワイトキューブに収めようとすると暴力性は削がれがちなんだけど、このどでかい喋る石板といい、公共施設内ではギリギリの音響の大きさといい、全体的に気色悪いスケール感といい、ホワイトキューブの中だけど無害化されていなくて、とはいえ調和していないわけでもないという絶妙なラインをついてる。
アペルト17 SCAN THE WORLD [NEW GAME]」2022、インスタレーションビュー、金沢21世紀美術館 |Photograph by KIOKU Keizo|提供:金沢21世紀美術館
石毛 まあ、お客さんたちがこの場所をどう感じてくれるかですよね。21美にはインスタスポットがいっぱいあって、実際に来てる人たちはみんな写真撮ってるじゃないですか。その延長なのかはわからないですがただのコンクリ打ちっぱなしの壁の前でまで写真を撮ってたりする。ああいう人たちがここでどんな動きをするのか、それこそこの石板前とかはインスタ映えすると思うんだけど、その写真たちがどんな風にインスタで流通してくんだろうなっていうのは楽しみですね。
髙木 今回、この空間自体もインパクトがあるんだけど、でも本当に大事にしてるところは美術館の外にあるわけだよね。
石毛 僕らの活動自体は外にあるわけだからね。あともう一つのメイン会場として用意してるのがウェブなんですよ。今回のために画像投稿プラットフォームを作りましたから。それはサーバー上に存在しているわけであって、美術館にあるというわけではないけど、ないというわけでもない。いろんな場所に存在できるんです。
https://www.scan-the-world.net/
BIEN 今回、でっかいスマホモニターのオブジェも会場には置いてあって、そこでそのプラットフォームを見ることもできるようにはなってるんですけど、別にここで見る必要もないんですよね。
アペルト17 SCAN THE WORLD [NEW GAME]」2022、インスタレーションビュー、金沢21世紀美術館 |Photograph by KIOKU Keizo|提供:金沢21世紀美術館
石毛 そうそう、どこでもサイト自体は見れますから。家だろうが近所の居酒屋だろうが。別にわざわざここに来る必要もないんですよ(笑)
DZ (笑)。すると、ここに足を運んでもらう上での動機づけはどこに?
BIEN まあ、集合場所ですね(笑)
髙木 21美はそもそもすごく人が来る場所なんですよ。SCAN THE WORLDのために来る人というより、21美を目的に来た人がここに遭遇するという形の方が実際に多いだろうし。だから、きっかけの場になればいいですよね。
DZ なるほど。それにしても、なんで石板なんです?
髙木 僕も交えて色々と酒飲みながら話してるうちに脳が溶けていった結果だと思いますね。
BIEN (笑)。まあ、この展示がゲームであるというポイントが大きいです。僕は遊戯王が昔からすごい好きなんですけど、あれって原作漫画内の古代エジプトでは、カードではなく石板を使ってバトルしてるんですよね。古代のゲームが形を変えて今に受け継がれてるという。だからでかい石板を作ってみました(笑)。別にこの石板には細かい設定はないんです。どこからきたものなのか、一体なんなのかもよく分からない。ただ、遥か昔からこういうゲームがあって、今僕らがそれを受け継いでやっているんだという大きな設定だけがあります。
DZ なるほど、遊戯王(笑)。でもカードゲームのつながりって本当にすごいらしいですね。それこそ「マジック・ザ・ギャザリング」みたいな人気カードゲームの場合、プレイヤーが世界中にいるわけで、プレイヤーでさえあればどこの国に行ってもそのコミュニティと繋がることができる、みたいな話を聞いたことがあります。
髙木 そうそう。石毛がステイトメントに書いていた「趣味性の連帯」ですよね。多分、そこで重要なのは、その連帯の強さがトライブまではいかないってところなんじゃないかな。不自由な90年代生まれ、ネットとフィジカルのあわいで生きてきた世代ならではの、ゆるい趣味性の連帯。この世代はすごく微妙な世代で、みんなが知っているJ-POPみたいな、今はなきマスの残り香のようなものをギリギリ嗅いで育ってる。そういう意味では、ここが公園みたいになっていて、だけれども公園ではないというところに面白さがあるんだと思うんすよ。今までとは異なるテンションの新しいコミュニティづくりの実践というか。
《SCAN THE WORLD [STAGE: COLLECTIVE BEHAVIOR]》2018 photo by たまえ
DZ ちょうど髙木さんが席を外してる間にそういう話をしてました。トライブが例として妥当かは分からないけど、いわゆる意味による強いつながりに対して、SCAN THE WORLDがゲームを通じて形成しているつながりは、非意味的で、部分的で、弱いよね、と。
石毛 でも、それがストリートだと思うんですよね。グラフィティとかスケボーとかが好きな人たちって、カルチャーを介してゆるくグローバルにつながってるじゃないですか。そういう世界を見てきたから、僕らも僕らなりに新しくつながりの媒介になるものを作れたらいいなと思ってるんです。
髙木 なるほどね。ただ、つながりを広げていくことと、かっこよくあり続けることって両立が難しい気もするんだけど、そこはどうなんだろう?
BIEN それはそうだね。
髙木 今回、美術館でやるにあたっても二人はかなりそれ用に翻訳してきたわけだよね。ある意味では「落として」きた。実際、チュートリアルとかは参加のためのハードルをかなり下げてる。そのぶん、裾野は広がるわけだけど、それは同時にダサくなるリスクも抱え込むことになるわけだよね。そのリスクに対して、二人がどれだけハードコアに振る舞えるのか。
石毛 展示の設営中に館長の長谷川裕子さんから言われたことがあったんですけど、それがかなり響いたんですよね。「あなたたちの活動の内容は分かりました。ここがその活動を広げていくための空間だということも分かりました。それを実現するためには、あなたたちはここを訪れるすべての人を死ぬ気で魅了しないといけません」と(笑)
髙木 「じゃあ、私はこれで」って言って去っていってね(笑)
石毛 でも本当にそこなんですよね。公共性を担保しながらも髙木が言っていたようなエッジィな部分をどうやって残していくか。これも館長の言葉だけど、「カリスマになりなさい」と。大きな課題ですよね(笑)
DZ ストリート的に言えばプロップスを目一杯高めとけってことですよね。そのためにはピースがいいだけではダメで、生き様も込みで魅了していかなきゃいけないわけですけど。
BIEN そうなんですよね。
髙木 族長のプロップスは全員に奢り切ることだとか言いますよね(笑)。でも、この二人が示すべきプロップスは、ストリートのマッチョなプロップスとも違うものだろうなとは思ってて、でもそれがどんなものなのかは分からない。
BIEN 考えないとだなあ。
「楽しく遊ぶために上手にルールを守りましょう。上手に遊ぶために楽しくルールを守りましょう」
DZ ところで、この展示は会期が来年3月までとかなり長いですけど、ある程度は今後の展開のプランは立ってるんですか?
石毛 ある程度は、ですね。多分やっていく中で感じることがいっぱいあると思うんで。まず3月までってことは冬の金沢をここで過ごすことになるわけです。雪が降りしきる中で僕らは外で本当に遊べるのか、みたいな課題もある。多分、そうした状況との格闘がそのまま作品に反映されてくことになると思うんですよね。
DZ そこは見る側、参加者にとっての楽しみ方のポイントでもありそうですね。たとえばアップされたのがただのレンガの画像だとしても、位置情報や日付から「え、これ真冬の豪雪の金沢で撮ったの?」みたいになるわけで。そう思うと、結構ハイコンテクストな遊びですね。
BIEN でも是非そういうところを楽しんで欲しいんですよね。
髙木 実際、日付は表示されますからね。ただ、さらにハイコンテクストなポイントとして、それが本当の情報なのか、こちらには確かめることができないんですよ。
石毛 嘘はいくらでもつけるからね。
BIEN TOHの [STAGE: TELEPHONE GAME]の時にもそういう状況があったんですよ。「外でスキャンする」というのが提示したルールだったんだけど、「これ絶対に中で撮っただろ」みたいな画像も送られてきて。でも本人に確認すると「いや外だよ」と言い張る。僕らは基本的にはゲームをコントロールしないんで、そう言われたら「そうなんだ」と思うしかないわけで。
石毛 SCAN THE WORLD自体が、街歩きの一般的なルールを読み替えることでゲームしていく遊びなんだけど、そのゲームで設定したルールがまた読み替えられていくっていう。でも、それも楽しみだったりしてて、僕らが作ったルールを是非ハックして欲しいんですよね。それはウェブのプラットフォームを作った時にも思ってたことで、それこそ画像投稿プラットフォームだからポルノとかを投稿されるとコミュニティ自体が壊れちゃうわけですよ。ただ、それを回避するためにAIとかであらかじめリスクを弾くべきかとなると、それはそれでコントロールが強すぎる気がする。結局、落とし所としてサイト上に微妙に警告を入れることにしたんです。「楽しく遊ぶために上手にルールを守りましょう。上手に遊ぶために楽しくルールを守りましょう」と、一言。
BIEN そうそう、壊すんだったら面白く壊そうねっていう。
DZ コモンスペースにつきまとう問題ですよね。みんながアクセスする場所というのはペルソナノングラータもアクセスできる場所だってことですから。とはいえ、そのペルソナノングラータを場を乱すからという理由で事前に弾いてしまったら、その場はもうコモンではなくなってしまう。
髙木 その議論はめちゃくちゃしたんですよね。そこの緊張感をなくしたらやってる意味がないと思うから。
BIEN いや本当にずっと話してたよね。
石毛 三茶のジョリーパスタでね(笑)
DZ (笑)。開きつつ閉じる、閉じつつ開くという両義的な状態が、いい遊び場をつくる上では欠かせないですよね。
BIEN 多分、その状態を作り出すのがかっこよさやカリスマ性みたいなところだと思うんですよ。僕らだってそうじゃないですか。かっこいい人たちがなんかやってるところでは変なことはそうそうできない。そういうテンションがある。だから、僕らがかっこいいものを投稿し続けることが大事なんだろうと思ってますね。
DZ そういえば投稿者はアイデンティファイされるんです?
BIEN いや特定できないようになってます。
DZ じゃあ画像の「感じ」とかでアイデンティファイされたりされなかったりするわけですね。
髙木 あるいは今回は対象物に手を触れさせていればiPhone撮影の写真でも参加できるようになってるから、たとえば僕ならいつも指輪をしてるんで、それが写ってたら僕だみたいになる感じかもしれないですね。
BIEN まあ、それすらも偽装できるわけで、各自、色々と工夫しながらやってみて欲しいですね。僕らはとにかく全部の画像を見てるんで。
DZ ここに来て二人と会った人たちが、その後、この二人をどう楽しませるのかというゲームでもあるんですね。
髙木 そうですね。そのためにここに二人を強制的に置いておくわけですから。
石毛 漬物石じゃないんだから(笑)
DZ いや、ここからどうなっていくのか本当に楽しみです。また会期の後半にでも遊びに来たいと思います。
じゃあ、最後に聞き忘れてた質問を一つだけ。今回の展示は髙木さんにとっても初めての美術館展示のキュレーションですよね。その第一発目にSCAN THE WORLDを持ってきた理由ってなんなんでしょう?
髙木 まあ、今回は21美のアペルト(※)っていう座組での展示なんですけど、今年の3月に21美に入ってすぐの企画のオープンコールで、SCAN THE WORLDと小松千倫を挙げてたんですよ。理由は両者とも今後美術館でまずやることがなさそうな人たちだから。
※「アペルト」は、若手作家を中心に個展形式で紹介する展覧会のシリーズ。作家とキュレーターが作品発表の機会を共に創出し、未来の創造への橋渡しをする。国籍や表現方法を問わず、これまで美術館での個展や主要なグループ展への参加経験は少ないが、個展開催に十分な制作意欲を持ち、アペルト実施以後のさらなる飛躍が期待できる作家を紹介していく。「アペルト(aperto)」は、イタリア語で『開くこと』の意味。
石毛 なんだそれ(笑)
髙木 いや、美術館でやったら面白いけどアウトプットが困難だからやることがなさそうって意味でね。その後、企画がなぜか通って、そしたらこの展示を担当することになった。まさかそうなるとは思ってなかったですね。
石毛 もう少し美術館で働いてからだったら提案しなかったでしょ?
髙木 ちょっと話は変わってきますね。いや、マジでここまで大変だったから。というわけで、二度目が多分ない展示なんで、どうぞよろしくお願いします!
取材・文/辻陽介
アペルト17 SCAN THE WORLD [NEW GAME]」2022、インスタレーションビュー、金沢21世紀美術館 |Photograph by KIOKU Keizo|提供:金沢21世紀美術館
SCAN THE WORLD
2018年より活動を開始したSCAN THE WORLD(STW)は、アーティストの石毛健太とBIENが主導するハンディスキャナで新しい遊びを考えるプロジェクトの総称。これまで開催した2回の展覧会「SCAN THE WORLD[STAGE: TELEPHONE GAME]」(TOH、東京、2021)、「SCAN THE WORLD[STAGE: COLLECTIVE BEHAVIOR]」(FL田SH、東京、2018)にて、新たな路上の遊びを提示してきた。
石毛 健太(いしげ けんた)
1994年生まれ。美術家、エキシビションメーカー。2018年東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻壁画研究領域修了。作家個人の活動に加えて、プロジェクト主体の活動、SCAN THE WORLD、Urban Research Group、インストールメンツに携わる。ニュータウン育ちをバックボーンに、都市や郊外についての再考や物語の読み替えをテーマに制作。近年の主な参加展覧会に「生きられた庭」(京都府立植物園、2019)、「水の波紋展2021」(ワタリウム美術館、東京)、「ストレンジャーによろしく」(金沢アートグミ他、2021)などがある。
BIEN(びえん)
1993年東京都生まれ。ストリートカルチャーやアニメーション、フィギュアなどの表現に影響を受けた独自のドローイングに基づく、抽象絵画やインスタレーション作品を制作しています。人が生み出した文字や記号、マンガやアニメのキャラクターなどの形を躍動的な線でなぞり直し、ストリートカルチャーやアニメーションの文化が持つ様々な表現様式を受け継ぎながら、記号的な意味の解体と再構築を試みています。近年の主な参加展覧会に「理由なき反抗」(ワタリウム美術館、東京、2018)、「PARALLEL ARCHEOLOGY」(OIL by 美術手帖ギャラリー、東京、2020)、「DUSKDAWNDUST」(PARCEL,HARUKAITO by island、東京、2021)などがある。
髙木遊(たかぎ ゆう)
1994年京都生まれ。2020年東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科修了、ラリュス賞受賞。ホワイトキューブにとらわれない場での実践を通して、共感の場としての展覧会のあり方を模索している。インディペンデントキュレーターとしてHB. NezuおよびThe 5th Floorの共同ディレクターを2021年まで務める。代表的な展覧会として、キュレーターによるガイドツアー形式の展覧会『生きられた庭』や「ATAMI ART GRANT」内の企画展『Standing Ovation | 四肢の向かう先』など。現在、金沢21世紀美術館学芸員。
〈MULTIVERSE〉
「レオ・ベルサーニをめぐって 」──クィアが「ダーク」であること──|檜垣立哉
「死と刺青と悟りの人類学──なぜアニミズムは遠ざけられるのか」|奥野克巳 × 大島托
「あるキタキツネの晴れやかなる死」──映画『チロンヌㇷ゚カムイ イオマンテ』が記録した幻の神送り|北村皆雄×豊川容子×コムアイ
「パンク」とは何か? ──反権威、自主管理、直接行動によって、自分の居場所を作る革命|『Punk! The Revolution of Everyday Life』展主宰・川上幸之介インタビュー
「現代魔女たちは灰色の大地で踊る」──「思想」ではなく「まじない」のアクティビズム|磐樹炙弦 × 円香
「生死観」としての有機農業 ──エチオピアで学んだ生の豊穣|松下明弘
「病とは治療するものにあらず」 ──全生を説いた体育家・野口晴哉の思想と実践
「俺たちはグレーな壁を生き返らせているんだ」──1人の日本人がまなざしたブラジルのストリート|阿部航太×松下徹
「汝はいかにして“縄文族”になりしや」──《JOMON TRIBE》外伝
「土へと堕落せよ」 ──育て、殺め、喰らう里山人の甘美なる背徳生活|東千茅との対話
「今、戦略的に“自閉”すること」──水平的な横の関係を確保した上でちょっとだけ垂直的に立つ|精神科医・松本卓也インタビュー
フリーダムか、アナキーか──「潜在的コモンズ」の可能性──アナ・チン『マツタケ』をめぐって|赤嶺淳×辻陽介
「人間の歴史を教えるなら万物の歴史が必要だ」──全人類の起源譚としてのビッグヒストリー|デイヴィッド・クリスチャン × 孫岳 × 辻村伸雄
「Why Brexit?」──ブレグジットは失われた英国カルチャーを蘇生するか|DJ Marbo × 幌村菜生
「あいちトリエンナーレ2019」を記憶すること|参加アーティスト・村山悟郎のの視点
「かつて祖先は、歌い、踊り、叫び、纏い、そして屍肉を食らった」生命と肉食の起源をたどるビッグヒストリー|辻村伸雄インタビュー
「そこに悪意はあるのか?」いまアートに求められる戦略と狡知|小鷹拓郎インタビュー
「暮らしに浸り、暮らしから制作する」嗅覚アートが引き起こす境界革命|オルファクトリーアーティスト・MAKI UEDAインタビュー
「デモクラシーとは土民生活である」──異端のアナキスト・石川三四郎の「土」の思想|森元斎インタビュー
「Floating away」精神科医・遠迫憲英と現代魔術実践家のBangi vanz Abdulのに西海岸紀行
「リアルポリアモリーとはなにか?」幌村菜生と考える“21世紀的な共同体”の可能性
「NYOTAIMORI TOKYOはオーディエンスを生命のスープへと誘う」泥人形、あるいはクリーチャーとしての女体考|ヌケメ×Myu
「1984年、歌舞伎町のディスコを舞台に中高生たちが起こした“幻”のムーブメント」── Back To The 80’s 東亜|中村保夫
「僕たちは多文化主義から多自然主義へと向かわなければならない」奥野克巳に訊く“人類学の静かなる革命”
「私の子だからって私だけが面倒を見る必要ないよね?」 エチオピアの農村を支える基盤的コミュニズムと自治の精神|松村圭一郎インタビュー
「タトゥー文化の復活は、先住民族を分断、支配、一掃しようとしていた植民地支配から、身体を取り戻す手段」タトゥー人類学者ラース・クルタクが語る
「子どもではなく類縁関係をつくろう」サイボーグ、伴侶種、堆肥体、クトゥルー新世|ダナ・ハラウェイが次なる千年紀に向けて語る
「バッドテイスト生存戦略会議」ヌケメ×HOUXO QUE×村山悟郎
「世界ではなぜいま伝統的タトゥーが復興しようとしているのか」台湾、琉球、アイヌの文身をめぐって|大島托×山本芳美
「芦原伸『ラストカムイ』を読んで」──砂澤ビッキと「二つの風」|辻陽介
「死者数ばかりが伝えられるコロナ禍と災害の「数の暴力装置」としての《地獄の門》」現代美術家・馬嘉豪(マ・ジャホウ)に聞く
「21世紀の〈顔貌〉はマトリクスをたゆたう」 ──機械のまなざしと顔の呪術性|山川冬樹 × 村山悟郎
「新町炎上、その後」──沖縄の旧赤線地帯にアートギャラリーをつくった男|津波典泰
「蓮の糸は、此岸と彼岸を結い、新たなる神話を編む」──ハチスノイトが言葉を歌わない理由|桜美林大学ビッグヒストリー講座ゲスト講義
「巨大な夢が繁茂するシュアール族の森で──複数の世界線を生きる」|太田光海 × 清水高志
「反・衛生パスポートのための準備運動──連帯主義と生-資本に抗する」|西迫大祐×塚原東吾