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「伝統とは灰をあがめることではなく火をともし続けること」──《二・二六 ハジチクーデター》が神宮前にともすハジチの火

2022年2月26日、渋谷区神宮前のクラブ〈bonobo〉にて《二・二六 ハジチクーデター》と題された、琉球古来の刺青であるハジチのリバイバルを祝うパーティーイベントが開催される。

 

いよいよ本格化しつつあるハジチの復興をことほぐ歴史的祝祭

来たる2022226日、渋谷区神宮前のクラブ〈bonobo〉にて《二・二六 ハジチクーデター》と題されたパーティーイベントが開催される。

 

 

主催は伝統的なハンドポーク手法によって琉球古来の刺青であるハジチのリバイバルとアップデートを試みるハジチャーコレクティブ〈hajichi_kai〉。2021年に緩やかに結成されて以来、ハジチ施術の実践や啓蒙などをはじめ、意欲的にその活動の幅を広げてきた〈hajichi_kai〉にとって、今回の《二・二六 ハジチクーデター》は2022年時点におけるひとまずの成果報告の場であり、またいよいよ本格化しつつあるハジチの復興をことほぐ祝祭の場でもある。

 

 

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それにしても「クーデター」とはなんとも剣呑な言葉選びだ。どうやらこれはイベントの開催日が偶然2月26日となったことにちなんだものらしい。しかし、その言葉が全くの伊達や酔狂かといえば、そうとも言い切ることはできない。本邦においてハジチの復興は紛れもなく「抑圧されたものの回帰」を意味する。この明治以来の地殻変動において〈hajichi_kai〉の存在が少なくともその震源のひとつをなしていることは間違いないのだ。

 

 

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もちろん、むやみやたらに気負う必要もまたないだろう。ハジチを含むタトゥーとは、まず第一に自らの身体を流血さえ惜しむことなく愉しみつくす行為であるはずだ。実際、〈hajichi_kai〉の活動は単に過去を現代に再現するという復古主義をすでに超えている。フライヤーに記された「伝統とは灰をあがめることではなく火をともし続けること」という言葉にも端的に表わされているように、伝統に深く学びながらも同時に現代的な美意識をたんまりと吸い込み、現在進行形のハジチを創造的に、かつ遊戯的に探究すること――すなわち「かたっくるしい話はそこそこにして、まずはこの文様の美しさと可能性を存分に楽しもうじゃないか」という軽やかさ、洒落っ気にこそ、〈hajichi_kai〉の新しさはある。

 

 

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当日は、〈hajichi_kai〉によってハジチの施術ブースが会場内に展開されるのみならず、琉球弧の研究者である喜山荘一らを招いたハジチをめぐる複数のトークライブが催される予定だ。フードにはtacosuaveの極上タコス、さらに22時以降のパーティータイムにはJUZU a.k.a. MOOCHYを始めとするDJ陣が奏でるトライバリーなサウンドが会場を揺らしてくれる。「ダンスとは反逆である」といみじくも喝破したのは歴史学者のガブリエル・アンチオープだったが、そのダンスにタトゥーも加わるとなれば、「クーデター」という仰々しい言葉選びもそれほど満更でもないように思えてこよう。いずれにせよ、この歴史的祝祭に立ち会わない手はない。狼煙はすでにモクモクと列島の上空に立ち込めている。

 

 

さて、最後にハジチ会のメンバーのひとりであるタトゥーアーティストの大島托に対して行ったハジチと本イベントについてのQ&Aを掲載する。今回はあくまでもライトに纏めさせてもらった。この先のディープなところに関心があるという方は、ぜひとも会場に足を運んでみて欲しい。

 

ハジチは歴史の知識ではなくそれを纏う身体と心とをセットにして体感するもの」

 

 

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―あらためてハジチとはなんですか?

大島  ハジチは琉球諸島を中心に古代より連綿と楽しまれてきた刺青です。江戸における現代タトゥーはハジチの手法を取り入れたとも言われています。

ハジチの魅力について教えてください

大島  なんと言ってもシンプルにオシャレを最大の目的としているところが魅力ですね。外側から通過儀礼やアイデンティティに集約されがちなトライバルタトゥー文化の生の姿が理解できます。また島から島へのデザイン変遷の様子は「伝統」とは生きて動き続けるものだということを示しているようにも思います。

※大島托とハジチについては大島の弊誌連載『一滴の黒』のハジチ編に詳しい。https://hagamag.com/series/s0051/8401

これまでのハジチ復興の流れについて教えてください。

大島  明治期の文身禁止令により衰退したハジチは、第二次世界大戦後GHQにより禁止令が廃止された後にも復興することはありませんでした。さらに80年代から始まる現代タトゥーの世界的流行にもまったくインスパイアされることもなかった。そうした現状を憂いた彫師たちによって2010年代ぐらいからぼちぼちリバイバルされるようになり、今日、ハンドポーク手法の浸透とともに本格的に拡散するタイミングを迎えています。

 

 

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※伝統的タトゥーの復興については大島托と山本芳美の弊誌における対談記事「世界ではなぜいま伝統的タトゥーが復興しようとしているのか」(https://hagamag.com/uncategory/5313)や、タトゥー人類学者ラース・クルタクに行ったインタビュー記事(https://hagamag.com/uncategory/6744)に詳しい。

 

―〈hajichi_kai〉とはどういう集まりなんですか?

大島 ハジチに関する技術や情報、コネクションのシェアを主眼とする実践者であるハジチャーたちの集まりです。不定期にいろんなところでイベントも開催しています。

 

 

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―今回のイベント「二・二六 ハジチクーデター」について教えてください。

大島 ハジチは歴史の知識ではなくそれを纏う身体と心とをセットにして体感するものです。サブカルの聖地である神宮前のbonoboにてクラブイベントとして行われる今回のクーデターは、タトゥーと同じ構造を持つダンスミュージックとの競演となります。

ハジチはニライカナイへのパスポートであるとも言われています。現代人の意識に築かれている生と死を厳しく別つ禁断の壁。その壁が崩れた時、人は蝶になり、蝶は人になる。ピンとくる方もこない方も、ひとまず会場でお待ちしています。

(文/辻陽介)

 

 

 

《hajichi_kai》https://www.instagram.com/hajichi_kai/

《hajichi_project》https://www.instagram.com/hajichi_project/

《Bar bonobo》https://www.bonobo.jp/

 

 

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