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「ゴミ動画、フードクラッシュ、経済奴隷……、そして熱狂はドラゴンカーセックスに達す」── ヌケメとゴスピの『Digital Scavenging 2020/SS』後編

ヌケメとゴスピ(God Scorpion)という、兼ねてより深い親交を持つ二人のアーティストが、なんとなく、あてどもなく、とりとめもなく、「最近の面白かったこと」をダラダラと語り合う。

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熱狂はドラゴンカーセックスに達す

ヌケメ あと、ジョン・ラフマンで好きなのとしては「Mainsqueeze」って作品があって。これこそ、ネット上から拾ってきた動画と画像とテキストだけで構成されてる作品なんだよね。

 

 

ゴスピ ヌケちゃんが前に言ってたタンブラーのゴミ画像、ゴミ動画に対するフェチズムにもつながるよね。

ヌケメ そうそう、まさに。めっちゃゴミでしょ、これ。こんなものを作ってたやつがバレンシアガのショーのディレクションをやるってすごいことだと思うんだよね(笑)。まあ、これは昔の作品だけどね、2014年だから。あ、ここのシーケンスやばいんだよ(01:30~)。クラッシュっていう性癖の人のための動画なんだけどさ。

ゴスピ うおお、最悪だ(笑)

ヌケメ 女性が食べ物とか生き物とかを踏み潰すということに性的な興奮を覚える人のための動画。その種の嗜好を持ってない人にとっては最悪な気分になるんだけどね。

ゴスピ きゃー、かわいそう!

ヌケメ うわああ、やばいよね。何よりも、こんなものをアートとして買うやつがいるっていうもまたね(笑)。あ、これ(03:00~)は洗濯機に重いものを入れておくと、勝手にクラッシュするっていうやつで、ネット上にいっぱい投稿されてるよね。一種のインターネットミームになってる。

ゴスピ まあ、まさにゴミ動画だよね。なんかさ、Oculusも初期の頃はさ、ストアプラットフォームの輪郭が凄い弱くて、なんのわけも無い物がいくつも上がっていた。でもそれが逆に面白かったんだよね。

ヌケメ 前はそうだったよね。まあラフマンはそういう意味では、「ネットの闇」みたいな文脈を背負ってる人でさ、ゴミ動画の中でも基本的に悪趣味なものを集めてる感じ。人間の見たくないところを無理やり見せてくるっていうかさ。

そういえば、その流れでこういうマイナーなフェチみたいなものを個人的にリサーチしてみたんだけど、その時に「フェチ動画オーダーメイド」(https://customfetishvideo.com/)ってサイトを鍵っ子さん(@kagikko)に教えてもらったんだよね。

ゴスピ へえ。

ヌケメ このサイトが面白くてね、これこれこういうフェチ動画を作って欲しいですって人と、じゃあ僕が作りますよって人のマッチングサイトで、マッチングすると対価が支払われるの。そこで作られた映像が部分的に無料で公開されてるんだよ。

 

 

ゴスピ あ、知ってるわ。昔、知り合いがこれのモデル側をやってた。

ヌケメ やってたんだ(笑)

ゴスピ 結構古くからあるよね?

ヌケメ 結構前からあるみたいだね。これ面白いのはさ、ユーザー視点だと完全にオナニー用のエロ動画なんだけど、性器とかの露出が一切ないから普通にyoutubeにも上がってるってとこなんだよね。

ゴスピ 最近は音系のやつがよく上がってるよね。

ヌケメ ASMRね。ただ、俺はASMRをあまりエロで広めて欲しくない感じはあるんだけど。もっと瞑想的だったりとか、広い範囲の効果があるジャンルだからさ。で、やっぱりさ、このフェチ動画の1ジャンルでもフードクラッシュがあって。ただただ飯を女の人が踏み潰すだけっていう。

 

 

とはいえ、一応は細かい指定があるみたいでさ、踏み潰す際の靴はハイヒールにしてくれとかローファーがいいとか裸足がいいとか。で、踏み潰すものも、一万円分のハンバーガーにしてくれとかカロリーメイト100本にしてくれとか、いろいろ。個人的には性的興奮には繋がらないけど、ただ、見てるとやっぱり独特の背徳感があるんだよね。

ゴスピ 作り手側としてはちょっとした小遣い稼ぎになるんだろうね。それでいうと、最近面白かったのはVICEで紹介されてた経済奴隷だよね。

 

 

ヌケメ あれはやばいね。

ゴスピ 感動したよね(笑)

ヌケメ 会うでもない、デートできるでもない、セックスできるでもない、ただただ貢ぐことに喜びを感じるという。面白いなと思った。でもこれって男女逆はないのかな?

ゴスピ ホストとかはそういう感じなんじゃない? 願望を叶えてあげるっていう意味では。

ヌケメ でもホストはさ、やっぱり恋人感覚を味わいたいってところがあるわけでしょ。でも経済奴隷では、普通の恋愛関係やセックスみたいなものはもういらないってなってる。だから、どちらかといえばアイドルとかの方が近いかもね。

ゴスピ アイドルも最終的にはキリストみたいになってくもんね。うちにラブライブ好きなスタッフがいて、この前、久々にコンサート行ったらしいんだけど、ステージにメンバーが出た瞬間にもう涙が止まらなくなったって言ってて。それってもはや宗教体験じゃん、と思ってさ。『宗教的経験の諸相』って本があるけど、そこでいう宗教性を間違いなくそのアイドルはその瞬間に帯びてる。キリストだって彼が全ての罪を背負っているんだっていうイメージが実際の対象と合致したからこそ、やばかったわけじゃない?

ヌケメ でもラブライブは何を背負ってるんだろう。キリストは原罪でしょう?

ゴスピ それはわかんないけどさ(笑)。この前、友人のエロ漫画家が、最近はコンテンツが長続きしづらくて消耗が早くなってるって言ってて。だからこそ、5年、10年続いてるようなコンテンツは、そのぶん、信仰を持ち続けれるからありがたいんだって。

ヌケメ まあ、それは言えるね。俺も昔、BiSってアイドルを追いかけててさ、その頃、やっぱり不思議な気持ちだったんだよね。奴隷って感じでもなく、でも単にファンって感じとも違くて。俺は現場にはたまにしか行ってなくて、主にネット越しに情報をひたすら収集し続けてたんだけど。BiSはアイドルの中でも特殊でさ、アイドルが普通やらないようなことをひたすらプロデューサーにやらされて、それを泣きながらやるみたいな感じで。で、それを泣きながらこっちも見るっていう、関係する人がみんなつらいみたいなアイドルだったんだけど。まあ登場人物においてはプロデューサーだけが悪なんだよね。でも、その悪がいたからこそ、カタルシスみたいなものがあった。ファンでもない人からしたらすごいくだらないんだけどね、踊れなかったダンスが踊れるようになったとか、オリコンにチャートインしたりとか、24時間ドンキでライブをやりきったりとかさ。あそこで得られた一体感ってなんだったんだろうってたまに考えるんだけど、それは、「あの子たちも俺と同じ地獄を生きているんだ」ってところにポイントがあってさ、だから、アイドルとファンの関係が地獄を生きる同志みたいな感じだったんだよね。

 

 

ゴスピ 被害者意識の連帯か。だから悪役のプロデューサーが必要なんだね。

ヌケメ そう、なんとか助かって欲しい、助けたいって思ってしまう。まあ、解散した時に「もうこういうのはいいや」って思ったけど(笑)。あと初音ミクが流行った時にさ、なぜ初音ミクがあんなに流行ったかっていう分析も色々でたけど、そのうちの一つに「スキャンダルのないアイドルだから」だって分析があって。要するに、生きてないからスキャンダルがない、だからファンが離れないんだ、と。聖人も多くは死後に聖人になるわけで、要するに死者は裏切らないんだよね。初音ミクは生まれつきの死者みたいなもんでしょ。

ゴスピ 今の話で思い出したんだけどAIに恋する映画で『her』ってのがあったよね。あの映画では彼女はOSで、だから体を持ってないんだけど、彼氏の方は生身の男なんだよね。で、そんな二人がセックスをするためにコールガールみたいなのを呼んで、彼女の体を代替的に使用してセックスを試みるっていうシーンがあったんだけど、結局できなかったって話があった。

 

 

ヌケメ インポになったおじさんが若い男の身体を代替的に使って愛人とセックスするみたいな。谷崎潤一郎の世界とか近いよね(笑)

あと、フェチ系で言えば、日本だとあまりメジャーじゃないけど、ドラゴンカーセックスってジャンルもあってさ。でかいドラゴンが自動車を犯すっていうエロ動画で、車系フェチ動画の一種なんだけど。めちゃくちゃバカバカしくて面白いんだよね。

 

 

ゴスピ これすごいね。

ヌケメ 人間とは?みたいな気持ちになるよね。車は特にアメリカだと男性性の象徴だったりもして、それが巨大なドラゴンに犯されるっていう。

ゴスピ 最強の存在にやられてる感じがグッとくるってことなのかな。

ヌケメ でも、実際にこれがさ、ポルノとして実用されるってことに、人間のすごさを感じるよね。まあ、ある種の巨女崇拝にも似てるのかもしれないけど。

ゴスピ 『GANTZ』の奥浩哉さんが連載している『GIGANT』もそんな感じだったね。ヒロインのAV女優の女の子が超巨大化して敵と戦うみたいな。『GANTZ』自体も巨大な生物に家畜化されるっていうスジだったけど。

 

『GIGANT(1)』奥浩哉

 

ヌケメ 巨女といえば春川ナミオさんもいるしね。あるいは、筋肉モリモリの女性フェチもあるよね。

ゴスピ ああ、KAYTRANADAの『AT ALL』のMVもそれ系だったよね……、そうそう、これこれ。

 

 

ヌケメ これめっちゃいいよね。KAYTRANADAがマッチョの女にケアされるだけの映像(笑)

ゴスピ それもさ、KAYTRANADAがいい具合にヒョロいんだよね。マッチョなボディービルダーとの対比でひたらすらヒョロいやつとしてKAYTRANADAが描かれる。

ヌケメ 「かわいいーw」っていうね。でもビデオと曲はめちゃくちゃかっこいい。

ゴスピ ね、かっこいいの。エイフェックス・ツインの顔が気持ち悪い感じのMVも筋肉は関係ないんだけど似たものを感じる。

ヌケメ ああ、顔が増えるやつ?「Come To Daddy」かな?

 

 

ゴスピ かな。あれも好き。たださ、俺自身は、フェティッシュって全然わからないんだよね、自分には全くない。だから逆に持ってる人、いいなって思っちゃう。

ヌケメ 俺も基本的にはそうだな。自分にすごいフェチがあって、それで興奮するっていうよりは、こんなフェチもあるのか、面白いなっていう、観察者の目線かな。

ゴスピ こういう欲望がありえるんだなっていうのがね。

ヌケメ そうそう、純粋にオルタナティブだなって思う(笑)

ゴスピ でも、ヌケちゃんは自体性愛の雰囲気あるよね。ラバーとか好きそう。

ヌケメ あ、それはすごい言われる。フェッティーズっていうフェティッシュ・アイドルグループがいるんだけど、そのリーダーのRちゃんに「全身脱毛したいんだよね」って言ったら、「全身脱毛したい人の欲望は、究極的にはラバーに向かうよ」って言われて。要するに、ツルツルな表面への欲望。で、全身ラバースーツでローション風呂とかに入るのがまじでやばいらしい。

 

 

なんかね、俺のツルツルになりたいって欲望は自分であり同時に彼女でもあるっていう状態への欲望で、もし俺がすごいスベスベで、かついい匂いとかがしてたら、俺がそのまま俺の彼女みたいになれるじゃんって思って。それってすごい便利なんじゃないかみたいに思った時があったの。まあ、今はもういいかなって感じだけど、結婚もしたし。

近いところでは真空パック系もあるよね。やってはみたいと思うけどでも、まあ、やらないんだけどね(笑)

ゴスピ うんうん、分かる。首吊りオナニーとかも気にはなるんだけど、そこまでやりたいかって言ったらまあいいかってなるんだよね。それをしなければならないって強迫観念までには至ってない。やっぱり高嶋政伸とかを見てるとさ、SMに対する強迫観念を感じるよね。限界まで行かなきゃいけないんだっていう。

ヌケメ 高嶋さんの場合は若干マウンティングも途中から入ってる感じするよね、変態マウンティング。

ゴスピ たがために(笑)

ヌケメ DOMMUNEの高嶋さんの回とかすごい面白かったけどね。やっぱり俺も自分がやりたいっていうより、やってるやつの話を聞いてるのが好きなんだよな。

ゴスピ 話を聞いてるだけでも多少はジャックインできるところはあるしね。

ヌケメ そうだね、実践はあまりしない。それでいうと、今、俺は縄文タトゥーを全身に入れてるところだけど、これは割と珍しいケースかな。やっぱりチンコを4つに割きたいとかはなかなか思えないから。4つに割いた人から話を聞くだけでいいやって。

 

死後の世界とハイヤーセルフ

ゴスピ 俺さ、中一の時に事故で死にかけてるじゃん? 母親と弟と事故にあって。まあ池に落ちちゃったんだけど。

ヌケメ あれ、自動車ごと池に落ちたんだったんだっけ?

ゴスピ いや弟が池で魚に餌をあげてたら落ちちゃってさ。で、俺と母親が助けに飛び込んで、後から父親も気づいて飛び込んだんだけど、結局、俺と父親だけ助かってさ。当時、俺は泳げなくて、だから、俺も溺れちゃったんだけど、その時にね、死ぬんだなって思ったの。だんだん意識が遠のいて、ふわっと脱力したんだけど、その瞬間にさ、「FINAL FANTASY Ⅹ」ってゲームの最初の方のシーン、主人公のティーダがアーロンに「他の誰でもない、これはお前の物語だ」って言われて引っ張りあげられるシーンがピッて頭に浮かんだんだよね。

ヌケメ でかい水の玉に吸い込まれるシーンね。

 

 

ゴスピ そう。で、そのあとに白い光にバーって包まれる感じがして、俺、助かったんだよ。

ヌケメ 臨死体験だよね。

ゴスピ うん。でも、それはホワイトライトだったんだよね。

ヌケメ 誰かから聞いたんだけど、ヨガインストラクターとかもヨガの極みみたいな境地に行き過ぎると、DMTが松果体から出てホワイトライトが見えちゃうらしい。で、ホワイトライトがこの世とあの世の境目にある、三途の川みたいな存在で、ホワイトライトの向こう側に進んで行っちゃうと死んじゃうらしい。そこでバックステップできれば生還できるんだって。

ゴスピ 映画の『マインドゲーム』もそんな感じだったよね。一番最初にあの世に行くんだけど、神様の顔とかが1コマずつ変化してって、で、お前はあっち側の暗い方に行けって言われて黒い方を指さされるんだけど、これ死んじゃうと思って白い方に向かうの。そしたら生きて戻ってこれたっていう。

 

 

ヌケメ そっちは白に向かっていくのが生存なんだね。

ゴスピ でも、そういう死のイメージが行き着く先ってさ、現実は仮象であるって考えだと思うんだよね。新井英樹さんが今描いてる『SCATTER』とかもそう。本当の自分は宇宙生命体というかもっと高次の存在で、今はたまたまこの身体におりてきてるだけという。

 

『SCATTER(1)』新井英樹

 

ヌケメ この前、BO NINGENTaigenさんと「ハイヤーセルフ」の話になったんだよね。まあ、ハイヤーでセルフじゃん、だから高次の自分ってことでしょ。でも、俺はそれを普段は意識できてない無意識の自分みたいなことかなって思ったんだけど、どうやら全然違うらしくて。ハイヤーセルフっていうのは本当に自分とは全く違う人間らしいの。この次元より高い次元で生きてる別の人間が、自分の体にウォークインしてくる感じなんだって。

ゴスピ ん~、イタコみたいにおろしてくる感じ?

ヌケメ いや、どうも気づいてないだけで、すでにおりてきてるってことなんだって。たとえば俺とかゴスピは、ストリートファイターのリュウとかケンみたいな感じ。で、操作しているプレイヤーがもう一個高い次元にいるとか、そういう話らしい。で、あるプロセスを経てそいつに会うことで、それまでなら耐えきれなかったような恐怖や、トラウマのフラッシュバックなんかもハイヤーセルフ経由で処理できるようになるらしい。要するに、恐怖を客体化できるようになるらしいの。

ゴスピ 俺がゴッドスコーピオンと名乗り、ヌケメがヌケメと名乗っていることにも近いのかな。本当の名前は出さず、あくまでもフロントはヌケメ、ゴッドスコーピオンに立たせるっていうか。

ヌケメ まあそうかもね。名付けによって、自分のある部分を他者化するみたいな感じはあるからね。

ゴスピ あるいは映画の『バーフバリ』みたいなさ、己自身を神話化するとか、そういう感じもあるのかもね。ギリシャ神話とかにしても読んでるとさ、高次の存在としてのやり取りをしてるじゃない?

 

 

ヌケメ ああ、そうだね。だからウルトラマンみたいな話でもあるよね。ウルトラマンって主人公に乗り移るけど宇宙人じゃん。だけど一体化した状態で暮らしてて、変身するとハイヤーセルフの状態が前面にでる。実際、ハイヤーセルフってでかい宇宙人みたいな存在らしいし。で、一人に一人のハイヤーセルフがついてるんじゃなくて、いっぱいいるんだって。

ゴスピ ゲームの『ペルソナ』だね。主人公がいろんなペルソナを呼び寄せて戦っていくっていう。

 

 

ヌケメ へえ、やってない。憑依させるの?

ゴスピ まあ「呼び出す」だね。主人公以外の普通の人は一人一個のペルソナなんだけど。

ヌケメ ジョジョもちょっとそんな感じだね。

ゴスピ あるいはアウェアネストレーニングではそのハイヤーセルフにあたるものが外側の自己なんだよね。でも、それも別に自己である必要はないっていうか、たとえばシヴァってことにしてもいいわけで。

ヌケメ アウェアネストレーニングや認知行動療法は、自己っていう一個のディレクトリを複数に分ける感じじゃない?一つのDドライブなんだけど、二つにセパレートして使うイメージ。だけど、ハイヤーセルフはドライブ自体が違うんだよね。さっきの「FINAL FANTASY」シリーズでいうと召喚獣的な感じ。

ゴスピ 分裂症の人が治療の過程で自己統一を図るのは、そうしないと分裂しちゃうからでしょ。その気がある人が「今日はシヴァ」とかやってると、大変なことになっちゃうから。

ヌケメ それでいうと俺はさ、13歳とか14歳くらいまでめっちゃキレやすい子供で、ちょっとしたことで友達に殴りかかったりとか、噛み付いたりしちゃってたの。キレやすい上に、キレたらめちゃくちゃだった。桃鉄に負けたってだけで、実家の壁を蹴りぬいて穴あけたりとか。それで、中学生の時にセルフアンガーマネージメントを始めて、そのアンガーマネージメントを20年くらいずっと続けることで、怒りとか嫉妬とか寂しさとか孤独への耐性みたいなものをゆっくり鍛えていって、今の温厚な俺がいるの。今の温厚な俺のことが俺は割と好きなんだけど、ただふとした時に暴力衝動が強い俺の蓋がパカッて開く時がある。で、パカって開いてみるとさ、その俺は消えてないだけじゃなく、ちゃんと33歳の俺みたいな大きさで出てくるから、うわ、お前、ちゃんと33歳になってんじゃん、みたいになるんだよね。

ゴスピ それ、少年漫画的には熱い展開だよね。『BLEACH』とかも主人公の裏一護みたいなやつが出てきて、「その剣を一番使いこなせるのは俺だ」みたいな話になるじゃん?

 

 

ヌケメ 幽遊白書でいうと仙水だね。まあ、漫画ってそうだよね。悪役が主人公と対になる存在じゃないと話が成立しないし。実際、主人公が暴走する系の展開って多いよね。

ゴスピ 主人公が潜在的な力を制御しきれなくなり、それを徐々に制御しつつ、使いこなせるようになっていくというのが、一つのセオリーとしてあるよね。

ヌケメ だから、俺は俺の裏一護をどうにかしないといけない。どうにかしてこの人格を統合しないと面倒臭いなと思ってる。

ゴスピ 統合したら強くなるのかな? 超ヌケメ的に。

ヌケメ 急に髪の毛が伸びたりとかしてね(笑)

ゴスピ ヌケちゃんを3Dスキャンしてさ、もう一人のヌケメと合体するってことをMR使って視覚的に繰り返しやっていったらいずれ合体するかも。

ヌケメ トラウマ療法的な感じにね。

ゴスピ 人間は暗示と催眠にかかりやすいから。

ヌケメ だから俺、催眠受けたいんだよね、その俺をなんとかするために。

 

光の曼荼羅からポストアポカリプトへ

ヌケメ あ、そうだ。evalaさんの無響室の作品あるでしょ?

ゴスピ ああ、今度、映画やるやつだよね。(『Sea,See,She2020.1.24-26 SPIRAL HALLで上映)

 

 

ヌケメ そうそう、hearing things #Metronomeっていう作品をevalaさんの事務所でこの前体験させてもらったんだけど、それがすごかった、やばかったんだよね。無響室の三方向にメトロノームが置いてあって、使う音はメトロノームの音だけなの。それぞれに小さいピンマイクみたいなのがついてて。三つとも設定されてる速度が別だから徐々にリズムがずれてくんだけど、そのずれた音とともに7分間くらい完全に真っ暗な無響室に放置されるんだよ。するとだんだん、メトロノームの音が増えてくような気がしてきて。え、すごいな幻聴?と思ったら、本当にダブが掛かってて、増えてたんだよね(笑)。 で、全面メトロノームの音みたいな感じになってたと思ったら、それがだんだんとホワイトノイズに変わっていくの。一気にすごい高い宇宙空間みたいなとこに持っていかれるような感覚があって。音だけなんだけどさ、空間が移動していくような感覚もあるんだよね。あるいは温度がヒュッて下がったような気がしたり。凄まじかったよ。

 

 

ゴスピ へえ、それは見に行きたいな。それに近い感じだと、池田亮司が2016年に京都国際舞台芸術祭の劇場でやってた「matrix」ってオーディオヴィジュアル作品もすごい面白かった。最初の340分くらいはずっとノイズが流れててさ、みんな音で頭の中がチリチリチリってなっちゃうんだけど、その後で、下がってた幕がガーって上がると、大きな灯体が何個も並んでて、それが最大出力で光を放つんだよ。すると、耳で感じてたノイズのチリチリが、今度は光のノイズになって、目が見えなくなる。本当に眩しいから目を閉じずにいられないんだけど、するとまぶたの裏までチリチリになって。あれはすごい体験だった。

 

 

ヌケメ やば(笑)。死人でそう。

ゴスピ 最前列の人なんて、途中でサングラスかけ始めてたからね。それやったらダメだよ、みたいな(笑)

ヌケメ 水風呂をぬるくしてどうする、みたいな(笑)。アピチャッポン・ウィーラセタクンの『フィーバールーム』もそんな感じだよね。本人はあの作品を演劇って捉えてるらしいだけど、最初、演技しているのはディスプレイそのものでさ。映像自体はとりとめのないタイの日常みたいな映像が流れてるって感じなんだけど、ディスプレイが動いてて、上部に吸い込まれてく。そして、舞台上の幕がバーって開くと、めちゃ強いライトが光ってて、その光が観客を撫でてくんだよね。ミラーボールも出てきたりして、客席に光の雨を降らしてさ。

 

 

ゴスピ アピチャッポンの作品も催眠誘導を利用しているよね。人を眠たくさせるというかさ、『フィーバールーム』も序盤は正直、眠たくなるじゃない? で、少し朦朧としてきた後半でものすごくダイナミックに展開していく。それによってある種の変性意識状態になる。あれはやっぱり狙ってるのかな。

ヌケメ 後半に向かって光がうるさくなってく感じね。狙ってるんじゃないかな?

ゴスピ 昔、魔術研究家のBangiさんと一緒に「NOWHERE TEMPLE BETA」って作品を作ったんだよね。これはBangiさんが、「法の書」をベースにした催眠誘導によって死後体験を見せていくってVR作品なんだけど。これもさ、最後はホワイトアウトなんだよね。やっぱり池田亮司もホワイトアウトだったし。

 

 

ヌケメ evalaさんのSynesthesia X1もホワイトアウトしてくよね。

 

画像引用:http://evala.jp/Synesthesia-Lab-feat-evala-Synesthesia-X1-2-44-Media-Ambition-Tokyo

 

ゴスピ Synesthesia X1はスピーカーが体をボコボコ刺激してくる感じが良かった。かなり指向性のあるアイソレーションタンクだよね。

ヌケメ 体全体で音を浴びるみたいなね。evalaさん、体が浮いてる感覚で音楽を聴きたいって言ってて、発想的にもアイソレーションタンクと近いなと感じたな。

ゴスピ あ、光ってことでいうとさ、あのイルミネーションもいいよね。

ヌケメ ミレナリオ?

ゴスピ そうそう、あれやばいよね。ミレナリオの映像とか見ちゃうと、いかに最近の東京のイルミネーションが手を抜いてるか分かる。

 

画像引用:http://www.millenario.com/history/2004.html

 

ヌケメ 表参道のイルミネーションとかショボいもんね。この写真はミレナリオ2004か。サイケだなあ。ほぼ曼荼羅だよね。

ゴスピ 都市空間に出現したMRだしね。

ヌケメ なんでこんな世界の真理みたいなもんが大手町にっていう(笑)。神戸のルミナリエは今もやってるよね。

ゴスピ 超見に行きたい。

 

 

ヌケメ ルミナリエいいよねぇ。なんかゴリゴリのリア充の遊びみたいでバカにしてたとこあったけど。ageHaO.Z.O.R.A.もさ、半分くらいの客は輩(ヤカラ)なんだよね。半グレみたいな見た目の人が一杯いる。で、もう半分がサイケデリックの修行僧みたいな感じ。ヨガインストラクターみたいな奥様と、インド雑貨屋の店長みたいなご主人のカップルみたいな。結構、輩ってトランス好きだったりするじゃん、ルミナリエも絶対に好きだよね。サイケと輩って思想性は全然違うはずだけど、どっかで通じてるんだろうな。

ゴスピ マックス・クーパーも最近はそういう感じじゃない? ライブも、それこそルミナリエみたいな感じがある。方向性は全然違うけど。

 

 

ヌケメ ブリュッセルのBOZAR FESTIVALで聴いたけど、すごい良かったよ、マックス・クーパー。あと映像だとマックス・クーパーのこの都市の映像が好きなんだよね。スティーブ・ライヒ感もある。無限都市的な。

 

 

ゴスピ 都市フラクタルだね。

ヌケメ でも都市ってフラクタルだよね。ユニットがあって、そのユニットの繰り返しによって建築することができるから。ジェス・ジョンソンの作品を見てても思うんだけど、やっぱりジェスが描く世界って、世界の構造みたいなものがブロック状に分けられて、単純なブロック構造の繰り返しによって作られていくっていうフラクタルな世界じゃん。部分が増えていくと全体になるけど、でも全体もまた縮めると部分になるみたいな。あの世界観って割と現実そのもののような気がする。分子とか原子とかの繰り返しでこの世界ができてる、みたいな。

ゴスピ 俺が昔、ツイッターをやっててバッドになったのと近いかも。TLの投稿分、奥に個人のレイヤーが何重にも重なっていくみたいなイメージが降りてきて何千層ものレイヤーが同時に走っているのがビジュアル的にイメージはできるけど整理し切れない、それが怖い~ってなったんだよね。

ヌケメ あれでしょ、ipodの曲を選ぶ時の、アルバムが無限鏡みたいにヒューって伸びていく感じ。

ゴスピ そうそう、脳がその情報をカバーできなくてパニックになる。

ヌケメ 実際、マックス・クーパーの映像も怖さあるもんね。やっぱデジタル表現の面白いとこはさ、ポストアポカリプト的な世界、死のイメージを感じるからなんだろうね。だから、こういうのを好んで見てる俺らっていうのは、無意識である種の暴露療法を行ってるのかもしれない。死への恐怖。滅亡への恐怖というか。さっきのマッチョな女に担がれてるのとかは、生に満ち溢れてたけど(笑)

ゴスピ 最初の話に繋がったね………………てか、結構もう長いこと話してるけどさ、腹減らない?

ヌケメ 減ったかも。なんか食べいく?

ゴスピ 行きますか。

 

 

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ヌケメ ぬけめ/1986年、岡山県生まれ。デザイナー、アーティスト。ミシンの作動データにグリッチを発生させる『グリッチ刺繍』など洋服を支持体とした作品を主に制作する。現在は彫刻作品を制作中。https://nukeme.nu/

 

God Scorpion ごっどすこーぴおん/1990年生まれ。Psychic VR Lab所属。メディアアーティスト。魔術、テクノロジー、時間軸、空間軸のフレームの変化をテーマに、ラボラトリー、チームと共に作品を製作。http://godscorpion.com/

 

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〈MULTIVERSE〉

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