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ケロッピー前田 『クレイジーカルチャー最前線』 #15 20年前に行われた「身体改造世界大会モドゥコン」は、身体改造カルチャーのビッグバンだった── 貴重資料を『死とSEX』展にて公開中

驚異のカウンターカルチャー=身体改造の最前線を追い続ける男・ケロッピー前田が案内する未来ヴィジョン。現実を凝視し、その向こう側まで覗き込め。未来はあなたの心の中にある。

20年前の身体改造世界大会の貴重資料

 2020年7月10日から22日まで、新宿眼科画廊にて『バースト・ジェネレーション:死とSEX』展が開催中である。

 この展覧会は、筆者・ケロッピー前田がキュレーション、雑誌『バースト・ジェネレーション』(東京キララ社)で展開してきたBURST的な世界を最新の作品群でお見せしようというものである。

 ゲストアーティストに「まんこアート」の巨匠・ろくでなし子を迎え、鬼畜悪趣味カルチャーの先駆者・根本敬、グロテスク表現を極める死体写真家・釣崎清隆、BURST創刊編集長&作家・ピスケン、褐色のエロス画家・ブライアン佐藤、淫魔の鉛筆画家・西牧徹、陰部神社を祀るPONO♡FEKO、そして、究極のカウンターカルチャー・身体改造を追う筆者が集っている。

 ところで、HAGAZINEの連載では、ここ数回、最新刊の著書『縄文時代にタトゥーはあったのか』(国書刊行会)について紹介してきた。タトゥーアーティスト・大島托との縄文タトゥー復興プロジェクト『縄文族 JOMON TRIBE』もまた、古代のタトゥーを現代に蘇生しようという点では、世界のカルチャーの動向とシンクロするような試みである。『縄文族 JOMON TRIBE』は、2020年7月11日から8月15日まで、新潟県中魚沼郡 津南町にある地域博物館「なじょもん」の企画展「森の聲―Papua×Jomon×Art」に出展している(※)。そちらについては、別の機会に詳しく紹介したい。

https://www.najomon.com/page_kikaku/index.php?id=1590547555&view_year=2020

 今回の展覧会『死とSEX』では、筆者は20年前に開催された身体改造世界大会モドゥコンについての貴重資料を展示するとともに、TBS『クレイジージャーニー』が同行した、ここ3年間の世界の身体改造取材を写真作品で紹介している。

 

 

 特に皆さんに知って欲しいのは、1999年から2001年までの3年間、カナダ・トロントで開催されていた身体改造世界大会モドゥコンである。

 展覧会のメインビジュアルをよく見て欲しい。説明されないと理解できないかもしれないが、その画像は、男性器からの火炎放射の様子である。

 『クレイジージャーニー』で、松本人志をはじめとするレギュラー陣から「いままでの取材で最もクレイジーな身体改造はどれか」と聞かれたとき、迷わず即答したのが男性器の火炎放射であった。そして、そのような最も過激な実践者たちが世界中から集まったトンデモないイベントが、身体改造世界大会モドゥコンでだったのだ。

 この大会は、身体改造ホームページBME(ボディ・モディフィケーション・イージン)が主催、招待オンリーで、参加資格は、指または手足の切断、男性器の切開、舌先の切り裂き、皮膚下への素材の埋め込みなどのリスクの伴う過激な身体改造を実践している人のみに限られた。

 そこに集まった改造実践者たちの驚愕の光景は、どれほどの写真と文章を並べてみても語り尽くせるものではない。筆者が身体改造ジャーナリストを名乗るようになったのも、この大会に3年連続で参加するという貴重な体験をしているからだ。

 

「出会いの場」がムーブメントを生み出す

 第一回身体改造世界大会は、1999年5月に「モドゥコン99」として開催された。アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、日本などから約500人の身体改造実践者たちがノミネートされ、そのうちの60人が実際に集まってきた。筆者は、97年に額にテフロン樹脂をインプラントしたことから、大会の参加が許された。ちなみに、このときの額のテフロン・インプラントは、いまでは皮膚から一部が突起した埋め込みトランスダーマル・インプラントに置き換わっている。

 主催者のシャノン・ララットは、1994年に身体改造ホームページBMEを立ち上げ、タトゥーやピアスを超える過激な身体改造というジャンルをインターネットというメディアを通じて、世界に発信していた。そんな彼が世界大会を開催しようと思ったのはなぜだろう。

「BMEにコンタクトしてくるマニアたちは、皆、インターネットで連絡を取り合っているだけで、直接、会ったことがない。だから、彼らをひとつの場所に集めてみようと思ったんだ」

 シャノンはそう語っていた。実はモドゥコンにはモデルがある。1970年代、アメリカの大富豪ダグ・マロイは、ピアスマニアという密かな趣味が高じて、当時、世界には数人しかいなかった(7人ともいわれる)ボディピアスの実践者を呼び寄せて引き合わせた。そのパーティで運命的な出会いを果たしたのが、のちに身体改造ムーブメントの理念となる「モダン・プリミティブズ」の提唱者・ファキール・ムサファーと、母親が看護婦で彫金の技術を持っていたジム・ワードだった。

 初対面で意気投合した2人は75年、ロサンゼルスに「ガントレット」という世界初のボディピアス専門店をオープンする。もちろん、その開店費用をサポートしたにもダグ・マロイだ。そして、ガントレットを通じて、その後のボディピアスの世界的流行が引き起こされる。ところで、『クレイジージャーニー』のロサンゼルス取材の際、ドラゴンレディばかりでなく、今はなきガントレットを知る老舗のピアスショップを尋ねている。

 

 

 というわけで、シャノンは、ダグ・マロイが主催した人々の集まりがボディピアスのムーブメントを引き起こしたという歴史にならったのだ。そして、最も過激な改造実践者たちをモドゥコンで引き合わせたことで、身体改造は世界的なムーブメントとして拡散していった。

 

そして「死とSEX」展へ

 そのような成果は、のちに『MODCON(モドゥコン・ブック)』という本に纏められている。指、手足を切断したアンピテーションの実践者、切断パーツを食する者たち、男性器から火炎放射する男など、20年近く前の大会の記録とはいえ、現在の視点から見てもびっくりするような身体改造がずらりと並んでいる。

 

 

 ちなみに、03年、筆者はそれを翻訳し、『モドゥコン・ブック(日本語版)』として限定千部で自費出版している。現在は品切れとなっているが、今回の展覧会でその刷り出しのファイルを公開している。自由に閲覧して欲しい。

 それをみれば、『クレイジージャーニー』で紹介してきた、フックを貫通して吊り下げる「ボディサスペンション」、マイクロチップやマグネット、電子機器などを身体に埋め込む「ボディハッキング」、あるコンセプトに基づいて全身改造を行ってドンデモない外観を手に入れる「コンセプトトランスフォーメーション」などの身体改造の基礎となる、アイディアや改造技術がすでに集められていたことがよくわかる。

 

 

 さらにいえば、その20年前に身体改造世界大会モドゥコンを大特集していたのが雑誌『BURST』であり、伝説となったその雑誌を現在に復刊したのが『バースト・ジェネレーション』であった。そして、その最新の報告となるのが、今回の展覧会『死とSEX』展というわけである。

 「なぜ、ギャラリーで?」と思う人もいるかもしれない。だが、「雑誌でやってきたことをギャラリーでやってやる!」ということはいまに始まったことではない。2013年には、ヴァニラ画廊で『死と未来』展を開催している(※)。

https://www.vanilla-gallery.com/archives/2013/20130304.html

 あらゆる意味で、『バースト・ジェネレーション:死とSEX』展は、その『死と未来』展の続編といえる。そして、コロナ禍にあって、今回の展覧会は90年代サブカルやグロテスク表現、性表現などを大きくフィーチャーし、時代を疾走してきた表現者たちに“新たな戦場”を提供しているのだ。

 会期中に新しいカルチャーが生まれる現場をしっかりと見届けて欲しい。

 

 

【展示情報】

「バースト・ジェネレーション:死とSEX」展

2020年7月10日(金)~22日(水)新宿眼科画廊

新宿眼科画廊(東京都新宿区新宿5-18-11  03-5285-8822)

12:00~18:00(水曜日~17:00) ※日曜、木曜休廊

www.gankagarou.com

詳しくはこちら:

https://www.gankagarou.com/s202007burstgeneration

参加アーティスト

ろくでなし子、根本敬、釣崎清隆 、ピスケン 、ブライアン佐藤、

西牧徹、PONO♡FEKO 、ケロッピー前田

入場のガイドラインは以下の通りです。

・ご来場されるお客様におかれましては、感染防止の徹底にご理解とご協力を頂きますようお願い致します。

・発熱、咳、全身痛等の症状がある場合は、ご来場前に必ず指定された医療機関へ受診をされますようお願い致します。

・体調にご不安のある方は、来店をお控えください。

・咳エチケットをお守りください。

・ギャラリー内に手指用アルコール消毒液をご用意しておりますのでご利用ください。

・他のお客様との距離を保ってご鑑賞下さい。

・マスクの着用をお願い致します。

・ギャラリー内の滞在時間は1時間を目安として下さい。

・ギャラリー内が混雑する場合は入場制限を行う場合があります。

 

【関連イベント】

『バースト・ジェネレーション:死とSEX』展・連動企画

「鬼畜道場:爆音上映&コメンタリー」

釣崎清隆 × ケロッピー前田

2020年7月17日(金)19:30~22:00

ROCK CAFE LOFT

(新宿区歌舞伎町1-28-5、03-6233-9606)

有料配信:視聴チケット代 ¥1,500(税込み)

観覧も可能、詳細は以下から
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/rockcafe/148571

 

【関連書籍情報】

ケロッピー前田・責任編集『バースト・ジェネレーション』(東京キララ社)

創刊号

 

Vol.2

※身体改造世界大会モドゥコンに詳しい。

ケロッピー前田『クレイジーカルチャー紀行』

KADOKAWA

本体価格1500円(定価1650円)

 

 

〈MULTIVERSE〉

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PROFILE

ケロッピー前田 1965年、東京都生まれ。千葉大学工学部卒、白夜書房(のちにコアマガジン)を経てフリーに。世界のカウンターカルチャーを現場レポート、若者向けカルチャー誌『BURST』(白夜書房/コアマガジン)などで活躍し、海外の身体改造の最前線を日本に紹介してきた。その活動はTBS人気番組「クレイジージャーニー」で取り上げられ話題となる。著書に『CRAZY TRIP 今を生き抜くための”最果て”世界の旅』(三才ブックス)や、本名の前田亮一名義による『今を生き抜くための70年代オカルト』(光文社新書)など。新著の自叙伝的世界紀行『クレイジーカルチャー紀行』(KADOKAWA)が2019年2月22日発売! https://amzn.to/2t1lpxU