THE 100 GREATEST TATTOOISTS IN THE WORLD 2019 |#41〜#50|SELECTOR 〔horigyn〕
⽇本のタトゥーイスト10⼈が選ぶ、注目すべき世界のタトゥーイスト100。第5回目のセレクターは名古屋が誇る彫ぎんさんです。ジャパニーズスタイルを中心に手がけていますが実力は真のオールラウンダー。
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ブレのない美しいライン、しなやかなカラー、繊細なドット、適切な大きさや配置。タトゥーの善し悪しというは、絵柄そのものよりもモチーフの魅力を最大限に引き立てるタトゥーイングのテクニックによって大きく左右される。いまや凄腕のタトゥーイストは世界中でひしめきあい、SNSでは最新トレンドが日々更新され目が眩むほどの情報量だ。そこで選りすぐりの日本のタトゥーイストたちに、各自の審美眼に基づいた今リスペクトされるべきタトゥーイストを100人セレクトしてもらった。レジェンドから注目株まで、珠玉の100選をとくとご覧あれ。(監修:川崎美穂)
Selector05
horigyn
⽇本のタトゥーイスト10⼈が選ぶ、注目すべき世界のタトゥーイスト100。第5回目のセレクターは名古屋が誇る彫ぎんさんです。ジャパニーズスタイルを中心に手がけていますが実力は真のオールラウンダー。濁りのない古典のなかに洗練されたセンスが冴え渡ります。今回は世界のジャパニーズスタイルのどこに着目をしているのか? 興味津々ご鑑賞ください。(川崎)
SWORD OF REBEL https://sword-of-rebel-horigyn.business.site/
Instagram https://www.instagram.com/horigyn/
Genre Japanese style
41. Pino Cafaro(Germany)
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独特なカラーの組み合わせがとても心地いいです(彫ぎん)
Pino Cafaro / Germany
日本のタトゥーイストたちとも親交が深い、ジャパニーズスタイルを中心に手がけるスペシャリスト。1996年、見習いから地道にキャリアをスタートし、現在は北ドイツの古都ブラウンシュワイクに30坪を超える広々としたスタジオ『The White Fox Gallery』を構える。白狐という名前にふさわしい真っ白な壁には、多数の浮世絵やタトゥーイストたちのアートピースが飾られ、日本文化に出会える貴重なギャラリーの役割を担っている。作品は日本の伝統色「四十八茶百鼠」に朱をさしたような落ち着いた色調が印象的。シンプルでありながら瀟洒で小粋なテイストは、いつもハンチング帽にベストを着こなす本人の紳士的な雰囲気と相まっている。日本刺青の魅力は、視覚的な面白さのなかに物語を読み解くイコノグラフィーが存在することだという。
[The White Fox Gallery]
http://www.whitefoxgallery.de/
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(画像引⽤元:https://www.instagram.com/pino_cafaro/)
42. Adam Kitamoto(Australia)
シンプルであるけれども、
やりすぎないディティールとわかりやすい構図、
浮世絵や錦絵を感じる色彩のバランスが
とてもよくできていて参考になります(彫ぎん)
Adam Kitamoto / Austoralia
2004年、30歳からタトゥーイングをスタート。10代の頃からタトゥーが好きでファーストタトゥーを経験し、魅了されて独学で学び始める。しかし、1990年代前半はまだインターネットも黎明期で十分な情報を得ることは難しく、結果的にプロのタトゥーイストになるまでに14年近くの月日がかかった。独学中に自身のカラダを横濱初代彫光にボディースーツで依頼し、以降日本の伝統芸術について深く学んでいった。2008年、メルボルンに念願のプライベートスタジオ『Ten-Ten Tattoo』を設立。現在は日本の伝統的なスタイルを専門にしている。日本刺青の魅力は、洗練されたひとつひとつの模様に意味があり、模様の向こう側には、何千年という歴史のなかで培われた、ものの見方や価値観、誇りなどが複雑に絡み合っている神秘性。ゆえに惹きつけられ、果敢に挑むだけの価値があるのだという。
[Ten-Ten Tattoo]
https://www.ten-tentattoo.com.au/
(画像引⽤元:https://www.facebook.com/tententattoo/)
43. Joel Ang(Australia)
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ニュースクールとトラッドがうまく融合している
お手本のようなスタイル
デフォルメがやはり日本の伝統を匂わすあたりに
センスがうかがえます(彫ぎん)
Joel Ang / Australia
オーストラリアに拠点をおくシンガポールのタトゥーイスト。世界の美術大学ランキングではアジア圏のトップクラスを誇る、シンガポール最高峰の名門美大『Nanyang Academy of Fine Arts(ナンヤン芸術アカデミー)』卒業。地元のスタジオ『8 Volts Tattoo』で見習いからキャリアをスタートし、持ち前の勤勉さを発揮して2007年からフルタイムでタトゥーイングを行う。Filip Leuなどの一流タトゥーイストたちと交流をもちながらスキルを磨き、若くして才能のあるタトゥーイストとして知名度をあげていく。2016年オーストラリアへ移住。2018年からはジャパニーズスタイルの名手Trevor McStay率いる『DYNAMIC TATTOO』に在籍。得意のフリーハンドを活かし、ダイナミックな構図で身体にフィットしたジャパニーズスタイルを多数手がけている。
[DYNAMIC TATTOO]
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(画像引⽤元:https://www.instagram.com/joel_ang_tattoo/)
44. Dan Sinnes(Luxembourg)
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僕自身の刺青青春時代を彷彿とさせてくれる
90年代のにおいを残しつつ
流行のスタイルや色使いで目新しさもあり、
とにかくかっこいいです(彫ぎん)
Dan Sinnes / Luxembourg
日本の妖怪を題材にしたキモかわいいジャパニーズスタイルと、愛らしいディック&プッシーの春画を描かせたら右に出る者はいない。モチーフの好みはともかく、着目すべきはすべてフリーハンドだということ。肌への下書きは簡単なラフでしかなく、頭の中にある複雑な構造の完成形にむかって、絵筆をとるようにマシーンを操る。タトゥーイングのスーパーテクニックは、オーソドックスな作品を見れば一目瞭然。フリーハンドはアイデアの引出しが多く、あらゆる技法を知っている者だけが実践できる神業である。この名誉あるヘンタイを生み出したルクセンブルクは、ドイツ、フランス、ベルギーに囲まれた国土が神奈川県くらいしかない小さな国。森と教会しかないような街に生まれ育ち、10代でタトゥーに憧れ、タトゥー雑誌を集めては、掲載されている作品のスタイルを真似てひたすらドローイングする日々を送る。国内のスタジオに見習いとして採用され、2000年からタトゥーイングをスタート。そこから先は、成長するために広い世界を見て、他人から学び、さまざまなスタイルを観察し、スキルを磨くべく各国のコンベンションに参加、またはゲストワークを行いながらオンザロードスタイルを実践。2012年、首都ルクセンブルク市の中心部にウォークインショップを設立。ちなみに、春画の雅号は〝彫まら〟である。
[Luxembourg Electric Avenue]
https://www.facebook.com/LuxembourgElectricAvenue/
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(画像引⽤元:https://www.instagram.com/dansin/)
45. Horimaroo(South korea)
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浮世絵や錦絵、版画等のデフォルメ感を
しっかり理解されていて、線からかっこいいです。
額彫りなんかは仁侠映画の肌絵師の方の
作品を思わせる雰囲気がとても素敵です(彫ぎん)
Horimaroo / South korea
2011年よりタトゥーイングをスタート。近年テクニカルな面が急激に発展して優れたタトゥーイストがひしめき合うソウルにおいて、10名以上のタトゥーイストが在籍する大箱のスタジオ『YM TATTOO』に所属。大柄のジャパニーズスタイルを得意とし、滑らかなボカシとモチーフのバランスの良さが定評。海外のコンベンションにも積極的に参加している。浮世絵を元にした古典的なモチーフを描くジャパニーズスタイルのジャンルでは、みな同じ題材を扱うゆえ、作家の個性を決定づけるオリジナルを確立するのは至難の技。もちろん客注もあるので凡庸こそ王道でもある。一生勉強だと本人も語る通り、元ネタをディグりまくった今後の活躍が期待されているタトゥーイストのひとり。
[YM TATTOO KOREA SEOUL]
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(画像引⽤元:https://www.instagram.com/ym_horimaroo/)
46. Ron Koupal(Denmark)
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シンプルにわかりやすい日本の彫り物をスマートに表現されていて好きです(彫ぎん)
Ron Koupal / Denmark
コペンハーゲンのウォークインショップで2年働き、2019年からコペンハーゲンの隣に位置するフレデリクスベア市にある、シェアオフィスのようなスタイルのプライベートタトゥースタジオを拠点にジャパニーズスタイルを手がけている。デンマークといえば、30周年を迎えたジャパニーズスタイルの先駆けHenning Jørgensenが世界的にも有名。その影響もあり、デンマークにはジャパニーズスタイルを手がけるタトゥーイストは少なくない。各国からHenningのスタジオ『ROYAL TATTOO』にゲストで来るジャパニーズスタイルの名手もいる。顧客のニーズに寄り添いながら、いかにスキルを磨き、オリジナルの表現を追求していくのか、将来が楽しみなタトゥーイスト。
[Void Collective]
https://www.facebook.com/Voidcollectivecph/
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(画像引⽤元:https://www.instagram.com/ron.koupal/)
47. Regino Gonzales a.k.a RG(USA)
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シンプルにカッコイイです(彫ぎん)
Regino Gonzales a.k.a RG / USA
ニューヨーク市ローワー・イーストサイドにある、ジャパニーズスタイルのスペシャリストTroy Denning率いる『Invisible NYC』に所属。2006年の設立以来、優秀なタトゥーイストたちがアーティスティックなタトゥーを提供することで顧客の信頼を集めている、ニューヨークを代表するスタジオのひとつ。なかでもRGは豊富な経験で培ったオールラウンダーの実力派。1995年からタトゥーのキャリアをスタートし、傍らでキース・ヘリングなどを輩出したNYの美術大学School Of Visual Artsで美術学士を取得。変幻自在にジャンルを織り交ぜ、大胆な構図と緻密なディテール、計算されつくした幾何学的な美しい流れをもつジャパニーズスタイルを生み出す。迫力のバックピースは細部まで見ることができる動画でチェックを!
[Invisible NYC]
https://www.instagram.com/invisiblenyc/
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(画像引⽤元:https://www.instagram.com/rg74/)
48. Hori Yo(Taiwan)
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正確なラインときれいな曙ぼかし、
基本的な絵のデフォルメが
日本の古典のポイントをしっかり
おさえているあたりが素敵です(彫ぎん)
Hori Yo / Taiwan
2000年代に入りタトゥーのムーブメントが黎明期を迎えた台湾において〝日式刺青(ジャパニーズスタイル)専門店〟はブームの起爆剤であり、その後のシーンを引率する大きな原動力となってきた。そんな台湾タトゥーシーンのなかで日式刺青の先駆けのひとりであり、優秀なタトゥーイストを輩出してきた中壢初代彫昌(HoriShou)の門下で活動をしていた彫易(hori Yo)は、2019年分家として独立し『勝利刺青(Victory Tattoo)』を設立。原色を使った派手めなジャパニーズスタイルが主流の台湾のなかで、淡くて品のあるカラーリングで存在感を放つ。白の使い方も効果的。新しいスタジオの場所は、台北市のなかでもっとも歴史のあるレトロタウンとして知られる大同区。近年はリノベーションスポットとして注目を浴びており、ノスタルジックな古い建物を改装したお洒落なショップがオープンしていることで注目を集めているエリアである。新旧が交わる街の空気感と調和のいい作風は、台湾タトゥーシーンの新たなパワースポットとなりそうだ。
[勝利刺青(Victory Tattoo)]
https://www.facebook.com/horiyotattoo/
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(画像引⽤元:https://www.instagram.com/horiyotattoo/)
49. Matthew Mooney(Australia)
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パット見た瞬間に目が留まるインパクトと
色使いが〝ザ・和彫り〟という印象でかっこいいです(彫ぎん)
Matthew Mooney / Australia
父であるGary Mooneyは、1985年にメルボルンの郊外ベイズウォーターでタトゥーイストのキャリアをスタートした。1988年にはスタジオ『Tattoo Magic』を設立。1995年にメルボルンのボヘミアン文化発祥の地フィッツロイに移転するも、翌年スタジオの所有権をタトゥーイストのGeordie Coleに譲り、1997年退職。息子であるMatthew Mooneyは家業を継ぐため、家族のルーツであるベイズウォーターに『Dagger & Lark Tattoo』を2012年にオープンした。ニュースクールで培った高いスキルを活かし、ジャパニーズスタイルに特化したタトゥーイストとして信頼を集めていく。2018年にはウォークインスタジオから完全予約制のプライベートスタジオにリニューアルし、スタジオの内装もモダンにアレンジされたラグジュアリーな和室空間に新生。サインボードには〝雲雀と短剣〟と日本語でスタジオ名を表記している。作品は大胆な構図、勢いのある流れ、緻密に計算された単色のベタ塗りなど、視覚的な効果を最大限に引き出しているのが特徴。インパクトのあるフロントピースも多く、通も唸る独創性にあふれている。
[Dagger & Lark Tattoo]
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(画像引⽤元:https://www.instagram.com/matty_d_mooney/)
50. Yoshio Honjo(Australia)
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下絵の段階でかっこいいうえに、独特の色使いが新鮮なのに
古典の雰囲気がしっかりあって素晴らしいです(彫ぎん)
Yoshio Honjo / Australia
故郷の大阪でタトゥーのキャリアを始め、2005年日本美術の豊富な知識と技術をもってシドニーに渡来。シドニーでも有名なタトゥーイストたちと12年間働いた後、現在はDean Carlyleが2010年に設立した『Hibernia Tattoo Studio』に所属。Yoshiの愛称で親しまれている。作品は柔らかで品のある色調を基本とし、とくに黄色の色使いは秀逸。スタジオには確かな実力をもった計6名のタトゥーイストが在籍し、アポイントメントオンリーの完全予約制。しかもクライアントからの連絡も個々のタトゥーイストがダイレクトにやり取りをするシステムを導入している。ちなみに、スタジオがテナントしている商業ビルHibernian Houseは、1913年に建てられた歴史的建造物として知られている一方、ビルの中へ入ると外観からは想像できない無数のグラフィティで埋め尽くされている。知る人ぞ知るシドニーの隠れたボヘミアン文化の中心地として、クリエイティブな職業の拠点となっている。
[Hibernia Tattoo Studio]
https://www.hiberniatattoo.com/
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(画像引⽤元:https://www.instagram.com/yoshiohonjo/)
監修
川崎美穂 かわさき・みほ/1973年、青森県弘前市⽣まれ。1996年より『BURST』の編集に携わり、1999年本邦初のタトゥー専門情報誌『TATTOO BURST』を創刊。雑誌が休刊する2012年までのあいだ編集長を務める。現在はタトゥーのある人でも利用可能な日本の温泉施設などを紹介するウェブサイト『Tattoo Friendly』を運営。タトゥーにまつわることをライフワークとし各メディアに執筆なども行なっている。
Tattoo Friendly : https://tattoo-friendly.jp/ja/
〈MULTIVERSE〉
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