THE 100 GREATEST TATTOOISTS IN THE WORLD 2019 |#21〜#30|SELECTOR 〔Washun〕
⽇本のタトゥーイスト10⼈が選ぶ、注目すべき世界のタトゥーイスト100。第3回目のセレクターは、飽くなき探求心と確かな技術で絶大な信頼を集めるワシュンさんです。
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ブレのない美しいライン、しなやかなカラー、繊細なドット、適切な大きさや配置。タトゥーの善し悪しというは、絵柄そのものよりもモチーフの魅力を最大限に引き立てるタトゥーイングのテクニックによって大きく左右される。いまや凄腕のタトゥーイストは世界中でひしめきあい、SNSでは最新トレンドが日々更新され目が眩むほどの情報量だ。そこで選りすぐりの日本のタトゥーイストたちに、各自の審美眼に基づいた今リスペクトされるべきタトゥーイストを100人セレクトしてもらった。レジェンドから注目株まで、珠玉の100選をとくとご覧あれ。(監修:川崎美穂)
Selector03
彫和舜
⽇本のタトゥーイスト10⼈が選ぶ、注目すべき世界のタトゥーイスト100。第3回目のセレクターは、飽くなき探求心と確かな技術で絶大な信頼を集めるワシュンさんです。(川崎)
彫和舜 https://www.hori-washun.com/
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Twitter https://twitter.com/info_washun
Genre 二代目梵天一門 和彫り洋彫り問わずオールジャンル
21. Aaron Cain(USA)
19歳の時に彼の作品を見て
タトゥーの凄さを思い知りました(彫和舜)
Aaron Cain / USA
1971年カリフォルニア州生まれ。1989年よりプロフェッショナルのタトゥーイストとして活躍。アートデザインはH・R・ギーガーとアルフォンス・ミュシャに強い影響を受け、タトゥーテクニックはバイオメカニカルタトゥーの創始者でありモダンプリミティブムーブメントに大きな影響を与えたGreg Kulzにスリーブを入れてもらうことで学習をする。キャリアをスタートした初期の段階からタトゥーマシーンの構造に魅了され、マシーンの製造も手がけていた。タトゥーイングのスキルアップと連動し、マシーンの機能と芸術性が向上すると、1995年からプロ彫師向けにマシーンの販売を開始し、2000年にはマシーンビルダーを本業とする。タトゥー作品同様、複雑な構造のなかにダークさと華麗さを兼ね備えた、職人に誇りを与える美しいマシーンは、世界中のタトゥーイストに愛されコレクターも存在する。
[Aaron Cain]
https://www.instagram.com/cainforge/
(画像引⽤元:http://aaroncain.com/)
22. Guy Aitchison(USA)
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Aaron Cainと同じ時期に知って
タトゥーの凄さを思い知りました(彫和舜)
Guy Aitchison / USA
1968年生まれ、タトゥーイストであり画家。低予算のパンクやメタルバンドのジャケットデザインなどをフリーランスのイラストレーターとして請け負っていたが、タトゥーこそ比類なき芸術的な媒体であると確信し、1988年シカゴのタトゥースタジオで見習いからキャリアをスタート。ダイナミックな視覚体験を引き出すために、タトゥーの技術に絵画のリアリズムのテクニックを導入し、最先端テクノロジーや科学、ファンタジーやサイケデリック文化を融合した独自の作風を確立。Greg Kulz、Aaron Cain、Eddy Deutsche、Marcus Pachecoといった視覚芸術活動を推進するタトゥーイストたちと交流し、抽象的かつ3次元スタイルのフロンティアとして技術革新を巻き起こした。コンベンションでセミナーを開催したことをきっかけに、タトゥーイスト向けの教材本『Reinventing The Tattoo』を販売。基礎的な知識のほか、色彩理論、身体と調和する構図、奥行きと照明のトリックなどを惜しげもなく公開し、タトゥーの芸術的発展に大きく貢献している。現在はイリノイ州のプライベートスタジオを拠点に活躍中。
[Hyperspace Studios]
https://www.hyperspacestudios.com/
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(画像引⽤元:https://www.instagram.com/guyaitchisonart/)
特典映像:バイオメカタトゥーの二大巨頭 夢の共演/Guy Aitchison vs. Aaron Cain:Tattoo Wars(TLC 2007年)
23. Markus Lenhard(Germany)
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Guy Aitchisonとのコラボレーションで
彼を知ってから虜になりました(彫和舜)
Markus Lenhard / Germany
2003年プロデビュー、ベルリン在住。ジャパニーズをベースとしたニュースクールを手がけて多くを学び、現在はスーパーニッチな分野であるアブストラクトアートやバイオメカニカルデザインを専門とする。自然とテクノロジーからインスパイアされた自由な線・色彩・質感などの抽象芸術を顧客の要望と融合させることにより、人肌はまるで天然石や惑星、木目や葉脈、液体や溶岩や地層のように、特異な物質としての輝きを放つ。コンベンション会場やゲストワークでの仕事を好まないため、顧客は世界中から飛行機に乗ってベルリンのプライベートスタジオを訪れ、タトゥーが完成するまでの期間ベルリンに滞在するスタイルをとっている。彫刻芸術のような立体的な表現をするこの種の作品の特長として、静止画と動画では印象や鑑賞ポイントが異なる点があげられる。
[LUX ALTERA BIOMECH]
https://lenhard.squarespace.com/cover
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(画像引⽤元:https://www.instagram.com/luxaltera/)
24. Phil Holt(USA)
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ジャパニーズスタイル、ニュースクール、バイオメカ
全てが彼のスタイルとして消化され
独自の世界観が見事に築かれています(彫和舜)
Phil Holt / USA
1976年、フロリダ州タンパ生まれ。幼い頃からタトゥーに憧れがあり、高校に進学すると地元のタトゥースタジオに見学しに行くようになる。そこでバイオメカタトゥーを得意とするタトゥーイストと出会い、進むべき方向が定まる。学校を卒業した1年後の1995年よりキャリアをスタート。その数週間後、師事したタトゥーイストが亡くなったことにより、各地にある優れたスタジオで働くことで腕を磨いていった。21歳で結婚し、すぐに子供が生まれたため家族を引き連れて引っ越しを繰り返していたが、2003年故郷のタンパに戻り自身のスタジオ『Red letter 1』を設立。現在は4人の子供の父親であり、ペインター、活版印刷のプリントメーカーとしても活躍。
[Red Letter 1]
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(画像引⽤元:https://www.instagram.com/philipdavidholt/)
25. Adam Barton(USA)
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驚異的なほど美しいラインと
独創性あふれるデザインと色彩に圧倒されます
彼の手のタトゥーは衝撃でした(彫和舜)
Adam Barton / USA
カナダとの国境に近いNY北部で生まれ、ハードコアを聴いて育つ。NY州立大学ニューパルツ校にてグラフィックデザインを学び、友達にタトゥーを入れたことをきっかけにタトゥーイストを志す。カリフォルニア州オレンジカウンティーへの引っ越しを機に、海辺の観光地ニューポートビーチのタトゥースタジオに勤務。近くで開催されたコンベンションでAdrian LeeとPaco Excelに出会い、人生を変えるチャンスだと思い彼らと働くためにサンノゼに住居を移す。当時サンフランシスコを中心としたベイエリアは、才能に満ちたタトゥーイストたちが活躍するタトゥーのメッカといわれ、なかでもAdrian LeeとPaco Excel率いる『New Skool』は、商業主義的なタトゥーから逸脱し、タトゥーとアートの可能性を追求する創作活動を精力的に行なっていた。ここで得た知識と情熱をもとに、特定のスタジオには属さずに全米各地を旅をしながらタトゥーイングを行うオンザロードのスタイルを実行。旅から戻った数年はプライベートスタジオで働きながら、ホットロッドのカスタムを楽しむ暮らしをしていたが、旧知の仲であるKLEMが2005年に設立したサンタクルーズの『Samuel O’Reilly’s Tattoo Parlor』に所属。
[Samuel O’Reilly’s Tattoo Parlor]
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(画像引⽤元:https://www.instagram.com/adambarton1891/)
26. Curran Whitman(New Zealand)
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奇抜な方向に行き過ぎずに、センスと画力で
他のアーティストを圧倒していると思います(彫和舜)
Curran Whitman / New Zealand
ニュージーランドの北島を拠点にする、タトゥーイスト&ペインター。彫師志願のころからInstagramに自作のデザインを公開し、とにかく描いて描いて描きまくる日々を送る。自分のデザインをプロのタトゥーイストに持ち込み、タトゥーを入れてもらいながら学習し、のちにNick Agnewに師事する。2014年から見習いとして働きはじめ、その間も自身の身体にタトゥーを増やしながらスキルアップをしていった。本格的にタトゥーイングをスタートすると、持ち前の画力の高さとセンスでめきめきと頭角をあらわし、現在もスケジュールの告知をInstagramで行いながらいくつかのスタジオでゲストとして働き、さまざまなオーダーに応えながら研究熱心にスキルを磨く。今後が楽しみな若手有望株。
[Filthy Tattooart]
https://www.facebook.com/filthytattooart/
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(画像引⽤元:https://www.instagram.com/filthytattooart/)
27. Stace Forand a.k.a. Water Street Phantom(Canada)
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こんなジャパニーズスタイルは見たことありません!
日本人としてメチャクチャ悔しいです!(彫和舜)
Stace Forand a.k.a. Water Street Phantom / Canada
カナダのバンクーバーにてプライベートスタジオを営み、ペインターとしても活躍。子供の頃から東洋の芸術に興味をもち、なかでも歌川国芳の『通俗水滸伝』シリーズと出会ったことで日本刺青に魅了される。単に浮世絵を真似るのではなく、当時の絵師たちの創造力の源に共鳴することで、何世紀にもわり日本のスタイルを定義してきた基本的な特性を理解したという。さらに、高度なタトゥースキルを身につけることで実現したのが、浮世絵を土壌に発展したマンガやアニメなどの近代のアートフォームをハイブリッドに融合した、デロリ度満点の現在の作風である。それはまさに、国芳の門人に月岡芳年や落合芳幾がいて、花輪和一や丸尾末広に至るまで、日本独自の文化文脈がずっと流れてきたように、人肌においても江戸時代から現代まで続く長い伝統の延長線上に自分もいると考えている。
[Stace Forand a.k.a. Water Street Phantom]
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28. Mike Dorsey(USA)
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アートワークの数とクオリティが凄まじいです(彫和舜)
Mike Dorsey / USA
1989年よりオハイオ州シンシナティにてプロタトゥーイストとして活躍し、多くのタトゥーイストたちに豊かなインスピレーションを与え続けている重鎮。ジャパニーズスタイルを得意とし22年間自身のタトゥースタジオを運営してきたが、現在はプライベートスタジオにてタトゥーイングとペインティングの創作活動に力を注いでいる。絵画作品は日本の浮世絵をベースに、日米のカルチャーや人物、社会現象などが風刺され、そのイマジネーションは過去と現代、伝統とポップカルチャーを縦横無尽に駆けめぐる。美しさのなかに思わずニヤリと笑ってしまう大人のユーモアを含み、愛すべきアイロニックな世界観でファンやコレクターを魅了してやまない。タトゥー作品のみならず、ぜひアートピースもじっくりと鑑賞することをおすすめしたい。
[Mike Dorsey]
https://www.instagram.com/mikedorseytattoo/
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29. Haku(South Korea)
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浮世絵がそのままタトゥーになった様な
緻密で繊細なジャパニーズスタイルが魅力的です(彫和舜)
Haku / South Korea
ソウルを拠点にジャパニーズスタイルを手がけるタトゥーイスト。近年韓国で流行している極細ラインの作品をInstagramに投稿したことで一気に注目を集める。イリーガルな韓国タトゥーシーンにおいて、8歳になるまで父親が暴力団員をしていた関係から日常でタトゥーを目にする機会があり、漠然と興味をもっていた。子供の頃は纏う人がもつ反抗的なイメージに好奇心がそそられていたが、実際にファーストタトゥーを経験してみると芸術的側面に惹かれていったという。タトゥーイストとしてキャリアをスタートした当初は日本の彫師の作品を手本にし、その後、浮世絵や東洋の古典美術、伝統衣装、遺跡、歴史的建造物など、多方面からインスピレーションを受けるようになっていく。これまでアジア各地でゲストワークを行い、2019年からは欧米圏へと行動範囲を拡大。今後はまだ表現していない多くのアイデアを形にすべく、経験を積みながらオリジナルのスタイル確立を目指す。
[Haku]
https://www.instagram.com/ha.__.ku/
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(画像引⽤元:https://www.instagram.com/ha.__.ku/)
30. Henry “Mr Dist“ Pyykkö(Sweden)
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彼のブルータルなスカルに首ったけです(彫和舜)
Henry “Mr Dist“ Pyykkö / Sweden
メタル超大国スウェーデンのエレブルーにある『Big Slick Tattoo』に所属。ピュアファッキンなメタルバンドWhyte Ashのリードギターも担当。北欧デスメタル/ブラックメタルを轟かせるがごとき、重厚なサウンド同様ヘビーなデザインが特徴。オーダーはカスタムワークしか受けつけず、トライバル、レタリング、天使、懐中時計、子供のポートレートのオーダーは禁止。コンタクトフォームには「I want to do the evil stuff(邪悪なものをやりたい)!!!!!!!!」のメッセージも添えられている。趣味は釣り。
[Big Slick Tattoo]
https://www.facebook.com/bigslicktattoo
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(画像引⽤元:https://www.instagram.com/mrdist/)
監修
川崎美穂 かわさき・みほ/1973年、青森県弘前市⽣まれ。1996年より『BURST』の編集に携わり、1999年本邦初のタトゥー専門情報誌『TATTOO BURST』を創刊。雑誌が休刊する2012年までのあいだ編集長を務める。現在はタトゥーのある人でも利用可能な日本の温泉施設などを紹介するウェブサイト『Tattoo Friendly』を運営。タトゥーにまつわることをライフワークとし各メディアに執筆なども行なっている。
Tattoo Friendly : https://tattoo-friendly.jp/ja/
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