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エロ本は「本」というメディアを超えた体験だった──ハチミツ二郎が作りだす“古くて新しいエロ本”とは?|ハチミツ二郎×中村保夫×芳賀英紀

一体なぜこのタイミングでエロ本を作るのか。エロ本の終わりと、その終わりから作り出される新しいエロ本の形をめぐって、エロ本に愛をもつ三者が語り合った。(Collaborate with 東京キララ社)


 

エロ本、その言葉から連想されるイメージは世代、ジェンダー、セクシュアリティ、あるいは個々の経験によってもさまざまだろう。ただ、少なくともある世代以上の男子の多くにとって、それは良くも悪しくも巨大な存在感をもつメディアだった。単に「ズリネタ」という意味においてだけではなく、若い世代の文化的な情報源として、仲間たちとの秘密の共有物として、あるいは親に対して持つ初めてのプライバシーとして、エロ本は「本」というメディアを超えた何かとして存在していた。

おそらくは、スマホ世代の若い人たちにとって、すでにエロ本はたまに本屋やコンビニで見かける程度の「おじさんの読み物」になっている。スマホがないから、ネットがないから、ようは他でことを済ませられないから購読するもの、不便な時代の不便な商品、以上——みたいな。そこには一片の真実も含まれているかもしれないが、たとえそれが真実だとしても、孤独な欲望の主戦場がエロ本からエロサイト(これさえも死語か)へ移行したことによって失われた何かもまたあるはずだ。もちろん、そんな懐古趣味に走ってみたところで、時代の流れは早く、また残酷でもある。コンビニからの撤退も決まった現在(あるいは10年以上以前から)、エロ本というメディアはいま急速に衰退しようとしている。

そんな中、あたかも時代の風に抗うかのように、あらためて新しいエロ本が創刊されるという。しかも、その責任編集を務めるのは、お笑い芸人のハチミツ二郎氏(東京ダイナマイト)であるというのだから驚く。さらに協力者として、東京キララ社の中村保夫氏、そしてHAGAZINEの代表である芳賀書店の芳賀英紀氏も名を連ねている。時勢を鑑みれば「蛮勇」と言わざるをえない。しかし、当のハチミツ氏は「勝算はある」と不敵に笑う。一体なぜこのタイミングで、このメンツでエロ本を作るのか。エロ本時代の終わりと、その終わりから作り出される新しいエロ本の形をめぐって、三者が語り合った。

 


 

(構成|望月珠美)

(Collaborate with 東京キララ社)

 

 

エロ本を入り口にカルチャーを学んだ

——この度、芸人のハチミツ二郎さん責任編集のもと、東京キララ社の代表である中村保夫さん、芳賀書店の芳賀英紀さんが協力者となり新しい『エロ本』が作られることが決まったわけですが、そもそもの発端には、ハチミツ二郎さんに『エロ本を自分で作って出してみたかった』という思いがあったとか。

ハチミツ二郎(以下、ハチミツ) もともとは知人から本を出す話を持ち掛けられて、じゃあ何を出すんだ? と考えていた時に中村さんと食事をする機会がありまして。「今後、芳賀書店さんとも色々と一緒にやっていく予定なんです」という話を聞いてパーンと思い浮かんだことなんですよ。

芳賀英紀(以下、芳賀) えっ、そうだったんですか!

ハチミツ てっきり中村さんにはNGを出されるかと思ったら「ああ、いいですね」とサクッと言われてしまって(笑)。ちょうどそれがコンビニからエロ本が撤退するというニュースが出た頃だったんですよね。

中村保夫さん(以下、中村) 日本からエロ本というメディアがどんどん無くなっていくということに、二郎さんも思うところがあったようですね。

ハチミツ コンビニからエロ本が消えるということは、今後は子どもがうっかりエロ本を目にすることがなくなるわけですが、これには良い面も悪い面もあると思うんですよ。昔、中野のゼロホールでライブをしていた頃なんかは、近くのコンビニでランドセル背負った小4、5くらいの男の子がエロ本を立ち読みしてずっと勃起をしている情景というのがある種の街の名物みたいになっていて。でも、そういう子が全員性犯罪者になるのかって言ったらそれは絶対違うじゃないですか。

芳賀 もしかしたらその子は今、すごく偉くなってるかもしれない。

ハチミツ 中野の区議会議員やってたりしてね(笑)。だから、必ずしも蓋をすることがいいことなのか、そうとは言えないんじゃないか、というのは、ずっと感じてはいたんです。

中村 そういうタイミングで知り合ったのが大きかったかもしれませんね。

ハチミツ 正直、最初は大した動機も何もなかったですよ。芳賀書店、じゃあエロ本、くらいの感覚です。でも、話してるうちにどんどん辻妻が合っていったというか。エロ本というメディアが失われつつあるんだとしたら、なんとかしたいよなあ、と。

 

 

中村 僕らの世代なんかはエロ本を一冊も読まなかった人はいないんじゃないかと思うんですよ。当時は自動販売機でエロ本売ってて、中学時代は夜中そこに度胸試しのように買いに行くところからスタートして。

ハチミツ あった、あった。

中村 そうして今はこうして立派な大人になって(笑)。それにエロ本って単にエロいというだけではなくて、実は表現する人たちの場でもあったんですよね。そこにはちゃんとカルチャーがあった。僕らもまたエロ本を読むことで、エロを入り口にカルチャーを享受してきたわけです。

ハチミツ エロ本を失うことは一つのカルチャー、一つの価値観が消滅することと同じですよ。

中村 そう。僕が一番危惧しているのはそこなんです。だから今回、二郎さんからこの企画を提案された時に、これはやらなきゃいけない流れだな、と。きっと今、東京キララ社が立(勃)ち上がらなければいけないんだと感じました。芳賀さんとしてはエロ本のコンビニ撤退についてはどういうお考えです?

芳賀 必ずしも撤退が悪いとは思っていませんよ。それはあくまでも流通の話ですし、置き場が一つなくなったというだけの話ですから。実際に、ここ数年のコンビニ売りのエロ本は決してカルチャーとは言えないものになっていたようにも思いますし。ただ、それがもし「エロ本が有害だから撤廃だ」というのであれば、話は別です。そこには危うさを感じますね。

少し話がブレてしまうのですが、今AV強要問題が取り沙汰されていますよね。AVの世界はファンタジーなんです。実際にしたいけど出来ないことの、いわば代用品です。でも、今ってAVの害の部分、負の部分にばかりに目がいってしまっていて、AVによって助かった人や救われた人などの声が何も取り入れられていない。今回のコンビニの件が、「エロ本は悪い、だから無くしてしまえ」という動きの一つなのだとしたら、やっぱりノレません。エロ本によって何かを学んだ人、救われた人、人生が変わった人もAVと同様にいっぱいいる。それなのに誰かにとって毒だと判断されたら排除してしまおう、というのは強引さを感じますね。

ハチミツ そう、僕らの世代はエロ本で学んだことが本当に大きい。エロ本が無くなった時に、思春期の意味不明な性衝動に駆られている息子に対して、お祖父ちゃんやお父さんが何か伝えられるのかと言ったら、難しいわけですよ。

芳賀 そうなんです。現実に親の教育や学校教育では、せいぜい通り一遍のことしか学べないわけで。綺麗事じゃない思春期の衝動を許してくれて、また学ばせてくれるエロ本がなくなると、困るはずなんです。

ハチミツ それこそ中1くらいの童貞だった時代、スーパー写真塾かなんかを読んでたら「本気で信じてたらマドンナとヤレるかもしれない」って誰かも分からないおっさんの言葉が書いてあったんですよ(笑)。それは確かエロのページじゃなくて読み物の部分で、でもその言葉は俺の中にストンと入っていったんです。

 

 

中村 それは良い言葉ですね(笑)

ハチミツ もしバーでマドンナと遭遇しても、何も喋らなきゃ何も始まらない。ヤレるかもと信じてぶつかっていけば案外、どうにかなるかもしれない。エロだけでなくて、大企業の社長とかに「働かせてください!」と懇願すればもしかしたら叶うかもしれない。

芳賀 そういう大切なことを、エロ本が二郎さんに教えてくれた、と。ヤレるかもって言葉は今日的には乱暴に感じるかもしれませんが、それって男子的には仲良くできるかも、みたいなもんですよね。

 

エロ本を知らない子供たち

芳賀 ところで、僕の世代はまだエロ本を読んでましたが、今の若い子はエロ本を読んだことがない人も多いでしょうね。

ハチミツ 俺の前のマネージャーは、新卒で入社してきた20代だったんですが、そいつはエロ本を買ったことがないらしいんですよ。「全部パソコンで見れるじゃないですか」って言い張るんです。でも読み物としてもエロ本って絶対に必要ですよ。今の小学生や中学生に俺も「マドンナとヤレるかもしれないぞ」ってメッセージを送ってやりたいですもん。

芳賀 わかります。エロ本を読んでた世代からすると、写真だけじゃなく、そこに載ってたちょっとした一文とかが、何故か不思議とずっと心に焼き付いて離れないことがあるんですよね。印刷された「本」というのは人間に近いんだと思います。劣化もしていくし。動画ももちろん好きですが、動画には評論がない。徹頭徹尾ファンタジーなんです。エロ本にはファンタジーのページもあって、だけど一色などには評論的なページもあって、そこが面白いんだと思います。だから、読んだことがないのはもったいないなぁ。

中村 まあネットで何でも手に入る時代ですからね。コンビニや自販機にエロ本を買いに行くとか、そういう能動的に行動を起こすことってそうそうない。それは仕方がないことでもありますが、どうなんだろうとは思いますね。

ハチミツ 俺は岡山の倉敷出身なんですけど、当時エロ本の自販機って市街地からかなり離れた山のあたりにあったんですよ。中2、3の頃は土曜日に何かにつけて男連中で集まってそこに向かっていくわけです。これって『スタンドバイミー』と同じじゃないですか。

中村 それは言えてる。たしかにエロ本をみんなで買いに行くってああいう感覚だ。子供達の間でのちょっとした秘密の共有で、ある意味で親離れの最初の一歩でもあって。

 

 

ハチミツ 映画みたいに悪いやつが襲ってくるかもしれない。でも、1人じゃないから大丈夫。メンバーの中には片親のやつも、親がヤンキーのやつもいれば、超真面目なお堅い家庭の優等生なんかもいる。それがみんなで親の目を盗んでエロ本を目指すんですよ。ただ単にエロ本買いに行っただけの話ですけど、あの時のメンバーはみんな覚えてると思います。家でスマホで見てるだけだと、秘密が本当に個人的な秘密になっちゃう。共有している感じが生まれないですよね。

中村 そう、エロ本を探す大冒険。これ、今の人にもぜひ味わってもらいたいって気持ちはあります。でも、どうすればいいんだろうなぁ。

ハチミツ もちろん、それによるトラブルはなくはないかもしれない。ただ、俺は中学生の頃に夜にエロ本を買いに行ってる最中に警察に鉢合わせて「何やってんの?」って聞かれたことがあって、とっさに「塾の帰りです」って答えたらお咎めなしでした。そういう上手い切り返し方も身につく(笑)

中村 エロ本の自販機かぁ。僕の近所だと小川町に一個と、お茶の水に一個ありましたね。そのお茶の水の方の自販機の前に、夜中まで仕事をして灯りが点いてる会社があったんです。あの自販機って、買うとガッシャンってかなり凄い音がするじゃないですか。そうすると、その会社の窓がガラガラって開くんです。もう待ってましたというタイミングで。

会社で残業してる人の楽しみだったかもしれないですね(笑)。エロ本抱えてダッシュして逃げた記憶が、当時からすると大冒険のようで。近所にエロ本を買いに行っただけのことなんですけど、それを強烈に今でも覚えてるんですよ。どんな本を買ったのかは忘れてますけど。

芳賀 そういう意味ではエロ本っていうのはメディアでもあり、かつ購入までのプロセスをも含んだ体験でもあるんでしょうね。自販機で買うにしたって、あれは落ちて来る瞬間が最高潮なんですよね。ガシャンって落ちてきた、あの瞬間。

 

 

中村 でも、芳賀さんの場合はご自宅で見ることも多かったんじゃないですか。

芳賀 そうですね。僕は昭和56年生まれなので、思春期に自販機はほとんど廃れていて、買ったのは一度だけ。なんせ実家が芳賀書店なので、「エロビデオちょうだい」って言うとオヤジがくれるような環境だったんですよ。紙袋2つにパンパンに入れて「はい」と渡してくれるんです。また新しいのが欲しくなったら言えばいい。

中村 もう一生分貰ってるんじゃないですか(笑)

芳賀 僕の当時の寝室は友達からビデオ部屋と呼ばれてました(笑)

ハチミツ 俺は昭和49年生まれですが、友達の間で中2の頃とか出どころのわからない裏ビデオが回ってましたね。そのうち1人が「それは俺のだ」とか言い出して占有権主張しだして、嘘つくな! みたいな(笑)。こういうの、今のスマホ世代では絶対にないんでしょうね。でも、だからこそ今回、我々が作るエロ本では、そういう共有の体験をあらためてしてもらいたいな、と思いますよ。

芳賀 でも、その共有の感覚って今から育つものなのでしょうか。僕たちはそういう世代として育っているから共有できるだけかもしれない。

ハチミツ 最近の男の子の感覚は本当にわからないです。「結婚したくない」はまだいいにしても「彼女とかいらないし」みたいな、そんなわけねぇだろって。

芳賀 どういう意味で「彼女いらない」って言ってるのかが知りたい。

ハチミツ それこそ経験豊富で、彼女じゃないけどヤレる子がいっぱいいますって人が「いらない」ならわかります。誰ともエロいことしてないのに本気でそう言っちゃってるやつ。やっぱりそれをどこかで食い止めないと。少子化にもつながってると思うんですよ。

芳賀 そういう人はもう今後誰とも触れ合う気がないんでしょうかね。

ハチミツ 強がって言ってるのか、手元の映像だけで処理してるのかはわかりませんね。

中村 僕らの時代は高校までにいかにして童貞を捨てられるかが大事だったわけじゃないですか。僕は普通にディスコで女の子と知り合ってましたけど、童貞の友達は卒業式の前日に歌舞伎町行ってナンパに失敗して、結局立ちんぼのおばちゃんを買ってましたからね(笑)。そこまでして捨てるってことに意義があるかどうかは別として、ただ、ある種の行動力を産んでた。

芳賀 当時はなんとなく中学で童貞を捨てた人は早い方って思ってましたけど、今の人って30歳過ぎまで童貞って普通にいますよね。

ハチミツ 芸人でもいますからね、30歳過ぎて童貞。俺はそんな奴、芸人の資質ないだろって思うんですけど。

中村 30歳を超えて童貞の芸人は認めない論(笑)

 

エロ本が作り出すコミュニティ

ハチミツ それと、やっぱり必要なのは『裸を見たい』という情熱。これが失われていくことはどうなんだと思います。少なくとも俺は男子にはその情熱を持っててほしい。

芳賀 ストリップ劇場もどんどん減ってますしね。小屋は年々潰れていきます。

ハチミツ それで食べてる女性もいっぱいいるわけでしょう?そういう人たちをもう一回持ち上げなきゃと思うんですよね。

芳賀 エロ業界で働いてる女性は、人気のあるなしでだいぶ格差がついているのも現状です。ストリップに限らず、持ちあげていきたいですね。

中村 そう豪語できる芳賀さんの立ち位置って、なかなか凄いですよね。

芳賀 うちは今のところ販売店ですからね。でも、今後はメーカーもやっていってアダルトカルチャーに深く根差す活動をしていきたいと思ってます。

ハチミツ 今、書店に買い物に来るお客様って変わってきているんですか?

芳賀 いえ、ここ10年くらいはそんなに変わらないですね。最初は30代だった方が40代になって、今も常連として通ってきてくれてる、みたいな。

ハチミツ じゃあ、来始めた頃には若かった人がそのままスライドしてずっと来てるって感じなんですね。

芳賀 それがベースにないと書店は無理だと思います。ただ、うちの場合は近所に大学が多いので学生さんもよく足を運んでくれるんです。特に最近はVR目当てで。この前「使ってみたいけど使い方がわからない」という若い男の子が来て、色々教えてあげたら買ってくれたんですよ。その彼が喜んで帰っていった翌日から、同じ大学の子らしい男子たちが来るようになりました。

ハチミツ それ、いいですよね。エロって数珠繋ぎのコミュニティが作りやすいじゃないですか。

芳賀 だと思います。見えない口コミの強さを実感しました。

中村 それこそ、エロが秘め事である証拠というか。仲の良い近しい関係の人にしか教えられないものなんでしょうね。

 

 

ハチミツ あと、エロにカマされるのも大事だなって。テレビ埼玉の番組でとある駅に降り立って、そこから徒歩30分くらいのエロ本自販機に「現役アイドルのハメ撮りDVD」が売ってたんで購入してスタジオで見たんです。そしたらどうしようもない太ったおばさんが出てきたんですよ、しかもオイルぬるぬるで。このカマされた感って、いいですよね。タイトル詐欺、見出し詐欺みたいなやつ。誰も得しないトラップ(笑)

中村 でも、男にはそうやって騙されることも必要なんでしょうね。ぼったくりバーと一緒。それがいずれ、詐欺には引っかからない予防線に繋がるはず。ただ、エロにはその危機管理すら突破してしまう魅力が存在してるんですよ(笑)

ハチミツ あれ、まだあるんですかね。エロ雑誌の広告通販。「隣の部屋が透ける!」とか「これでモザイクが取れる!」みたいな。友達で隣の部屋が透けて見えるレンズを何万かで買った奴がいるんですよ。でも結局、壁に穴開けないといけない仕組みなんですよあれ(笑)。隣の部屋ブチ抜かなきゃいけない。

中村 あれは「騙された」っていうのが恥ずかしくて警察に言えないことを逆手に取ってるような気がします。

芳賀 そういえばお2人は、ビニ本も買われてた世代ですか? あれもカマし率の高いものだったと最近よく耳にするのですが。

中村 僕は中学に入学する頃にビニ本摘発があった世代なので、リアルタイムで買ってはなかったです。でもちょうどその頃、僕は私立の中学に入学したんですけど、最初の自己紹介でみんな自分の出身なんかを言わなくちゃならなくて、僕は「神保町から来ました」と言ったんです。そしたら一斉に「芳賀書店!」「ビニ本!」って言われて。それくらいビニ本のパワーは強かった。中高一貫の学校なので一度あだ名がつくと6年間変わらないから、その手のあだ名をつけられないようにとにかくエロの話題を避け続けました(笑)

芳賀 でも、当時よく買っていたという方は「お世話になった」という反面、「今思えば大したエロさじゃなかった」とも言われますね。

中村 そりゃあ、僕らは中1でしたからね。ビニ本は憧れというか、思春期にはじゅうぶん刺激的なものでしたよ。そこは年代の差じゃないかな。

 

エロ本なき時代のエロ本

芳賀 今回、ハチミツさんはどういうエロ本を作りたいと考えてるんですか?

ハチミツ 自分がやる以上、面白さも追求したいですよね。人選もがっかりさせないと思いますよ。今すでに大物コメディアン始め皆さんからオーケー貰ってますから。もちろん、必ずエロを語ってもらいます。13〜14歳くらいの頃の性の悩みとか。ほんの数%であっても、10代の男子に手にとってもらいたいんです。

芳賀 色んな方々の性の原風景が見えるのっていいですよね。

ハチミツ 40代でも童貞が増えている中、この本をきっかけに「童貞が捨てられました!」とかあったら嬉しいじゃないですか。欲しいですよね、童貞お悩み相談(笑)

芳賀 だったら出版が決まったらイベントもしなきゃいけませんね。

ハチミツ そうですね。たしかに、買ってくれた方には直に会ってみたいです。

中村 いつか僕が自販機でエロ本を買う様子を見られていたように、今度は僕たちが見る(笑)。まあ8月末でコンビニエロ本が終わってしまうものを逆手に取るという形で問題提起していけたらと。そういう意味では良いタイミングだったと思っています。芳賀さんは書店としてはどういうビジョンですか?

芳賀 基本的に芳賀書店は売る側なので、まず供給が無いことには。出版社さんが「コンビニが置けないならもう作らない」と言われてしまえばそれまでなんですよね。コンビニ誌が無くなるという話を聞いた時、ああ、熱のないエロ本すら無くなっていくのかと思いました。すでにコンビニエロ本に熱は感じませんでしたから。正直、エロ本という文化は徐々に衰退していくだろうなと感じてはいました。

ハチミツ そこに話を持ち込んだのが俺なんですね。

芳賀 いや、有難かったです。新しいエロ本の形、単にヌキだけではなくエンターテイメントも含めたものとして、書店経営の中で軸にしやすいものになると思います。もちろん、こういう時期なので読者さんも厳しい目では見るでしょうけど、書店は喜んで協力すると思います。

ハチミツ 売るということだけで言えば、今はアマゾンでも買えますし家族にもバレずに済みます。でも、この本はどこどこに行けば買えるらしい、有名な芸人のコラムもあるらしい、と。俺らの世代のCDジャケ買いみたいな感覚で、神保町を巡って手に入れ、ネットだけでなく足でも買わせることを大事にしたいですよね。

中村 でも今の人が、それを買ってどこに隠すのかっていうことにも興味は沸きますよね。

ハチミツ そういう話も本に入れます。俺たちが中高時代、どこに隠していたのか。見つかってないと思っていたのに母親にバレていたなんてことも含めて。

中村 その感覚って、30年後の世代でも変わらないものじゃないかと思うんですよね。

芳賀 うちは家業的に全部テレビの横に山積みでしたけどね(笑)。ただ今はスマホの中に全ての秘密がしまってある、というのが一般的なのかもしれないですね。実際、それってブックマークだけでもいい。ダウンロードすらしなくてもいいわけで。

中村 たしかに。ネットに無料のエンターテインメントが溢れる時代に、あらためて『エロ本』をコンテンツとして提示する上で、どこらへんがポイントになってくるんでしょう?

芳賀 僕は勝手に、今後のエロ本はどこかしら教本になることが大事だと思ってるんです。先ほど二郎さんが言われていた著名な方のエロの原風景の紹介だったりも、教材の一つですよね。エロ本=抜けるのがマストという考えはダメだと思います。

 

 

ハチミツ これからのエロ本は「抜かない」ものかもしれないですね。例えば、戦後に小麦粉溶いただけのすいとんを美味しいと言っていたのは、当時それしか無かったから。今はエロに関してはまさに飽食の時代になってますからね。エロ本という名のすいとんを「美味しい」と思って抜く必要はなくて、「昔の人はこんなもので……」と頭の片隅に置いてくれたら嬉しいですよ。

芳賀 あえて読む古文、みたいな(笑)

ハチミツ でも編集長としては、モデルの女性には「みんなあなたの裸で抜きますから!」って言いますけどね(笑)。「10代の少年たちが全力で勃ちますから!」って盛り上げるつもりです。

中村 いや、実際にそうなる可能性も大いにあると思いますよ。ここまでエロ本が低迷すると、逆にエロ本という存在が新鮮に感じるというか。あえて音楽をテープで聞くみたいな流れもあるじゃないですか。新しいメディアとして捉えてもらえるんじゃないでしょうか。

ハチミツ アナログで興奮してしまう若者、みたいな特集が夕方のニュースで組まれてね。

芳賀 ただ、もしかしたら片手で読んで片手で……っていう技術から教えてあげないといけないかもしれないですよ(笑)

ハチミツ いや、下手したらスマホ見ながら読まれるかも。どっちかでエンジンかけてどっちかでフィニッシュみたいな二刀流。

芳賀 バイリンガルですね(笑)。古くて新しい文化に触れた新しい読者さんたちが、新しい抜き方を作り上げていく(笑)

中村 それ発見したら、編集部にぜひ報告して欲しいですね。

ハチミツ でも絶対にメールやツイッターでなんか受け付けませんよ! 昔ながらのはがきにしてもらいますからね。でも、必ず何か景品を付けます。どしどしごお応募ください(笑)

中村 ちなみに今回はクラウドファンディングを行いたいと思います。ぜひ、そこから参加してください。これはエロ本というカルチャーの存続をかけた文化事業です。この世界からエロ本が失われて欲しくない、という熱い思いを抱えた皆さんからのご支援を期待しています!

 

クラウドファンディングはこちら

 

 

Collaborate with 東京キララ社

 

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ハチミツ二郎 はちみつ・じろう/1974年、岡山県倉敷市出身。お笑い芸人。よしもとクリエイティブ・エイジェンシー所属。松田大輔とともに東京ダイナマイトとして活躍。お笑いプロレス団体・西口プロレス所属のレスラーとしても活躍するが2019年に引退。

中村保夫 なかむら・やすお/1967年、神田神保町生まれ。2001年に東京キララ社を立ち上げ、「マーケティングなんか糞食らえ!」をスローガンに、誰も踏み込めなかったカルチャーを書籍化し続ける。書籍編集者以外にもDJ、映像作家として幅広く活動。著書に『新宿ディスコナイト 東亜会館グラフィティ』(東京キララ社)など。

芳賀英紀 はが・ひでのり/1981年生まれ、東京都出身。神保町の老舗書店「芳賀書店」の三代目として21歳の時に社長に就任。エロスの求道者としてSEXアドバイザー、SEXコンシェルジュとしての活動も行う。

 

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