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代沢五郎 from O.L.H. 『Fetish Guitar Ethic Committee』 #04 Fender #1 ──色つきの女でいてくれよ

X-RATEDノワールファンクバンド〈Only Love Hurts a.k.a. 面影ラッキーホール〉の主催者・代沢五郎(sinner-yang)がナビゲートする“フェティッシュギター”の銀河系。第四回はFenderのカスタム・カラーとハードレリックの魅力について。

ギターメーカーと自動車マーケットの蜜月

Fenderはテレキャスターがブロンド(亜麻色)、その他がサンバースト(黄・赤・黒のぼかし)と、機種によって色が決まっていました。1960年のカタログから、別注のカスタム・カラーのバリエーションが正式紹介されますが、実際にはユーザーからの注文に応じて1950年代の後半から極少量製造されていたようです。

1971 Fender Precision Bass / Blue Ice Metallic  (# 304370)

この色は、カスタム・カラーの中でも特にレアでアレなブルー・アイス・メタリック。

1965年の販促用カスタム・カラ―・チャートを見ると、5%の追加料金でオーダー可能な14色が紹介されており、この色はBlue Ice Metallicと表記されています。69年のカラーチャートでも同様です。しかし、一般にはIce Blue Metallicと呼ばれることが多く、さらには当のFenderも後のヴィンテージ・リイシューではそう表記しちゃっているから余計ややこしい。どちらが正しいのか未だに謎です。65年~69年までのカスタム・カラ―なので、71年製のこのベースには本来採用されない筈なのですが……。これも謎です。

1969 Selection Chart for Custom finishes Available For Fender Fine Electric Instruments(Blue Ice Metallicは左ページ左列2段目)

このBlue Ice Metallicはフォードの初代マスタングにも採用された色です。初代マスタングは、クルマカテゴリーの中にとどまらず、アメリカの消費動向の変化の歴史的アイコンでもあります。若者向けの低価格コンパクト・カーとして1964年に発売されたマスタングの記録的大ヒットは消費の中心が若年層に移ったことを鮮やかに証明するものでした。産業の規模は違えど、同じく若年購買層を狙うギター・メイカーにとっても、この流れは大きい刺激になったと想像されます。実際に同時期にFenderの生産数も大幅に増加しています。Fenderがそれまでのサンバーストとブロンドの2色展開から、60年代にカスタム・カラーを導入してカラバリを増やすにあたって、当時の自動車のカラーを用意したのは非常に興味深いです。

1950年代のアメリカの好景気は、自動車をそれまでの移動手段から、社会生活の中心的存在にまで押し上げます。そして単なる道具ではなくなった自動車をセールスするために、メーカーは多くのカラーバリエーションをスタートさせます。Fenderがこれに倣ったのは、マーケットの層が似通っていたこと、先行商品である自動車の売れ行きである程度どの色に需要があるか読めること、巨大産業である自動車メーカー用の塗料の流用がコスト的にも有利であったと言われています。ちなみにライバルGibsonもfenderに若干遅れてほぼ同じコンセプトの自動車のカラー流用のカスタム・カラーを始める他、リンカーンやクライスラー他で自動車デザイナーを務めたRaymond H. Dietrichに新機種Firebirdのデザインを依頼する等、1960年代初期のギター・メ-カーがいかに自動車マーケットを意識していたがよくわかります。

Ford Mustang

元々はこの色ですが、このベースはトップのクリア層がうっすら日焼けして淡いグリーンメタリックになっています。しかし大きなダメージはなく、アラフィフにしてはアンチ・エイジングがんばってます。

このベースはフラットワウンド弦とスポンジ・ミュートがよくマッチする枯れたアーシーな音色。見た目の印象と本当のキャラがまったく違うケースがあるのは人と同じです。小綺麗に頑張ったおばさんを見るとついつい「ケッ、お高くとまりやがってよー」と思いがちですが、付き合ってみなきゃ本当のところはわかりません。

女もギターもハードレリックがお好き

Fenderのカスタム・カラーはジャズマスターやジャガー等の上位機種に集中しており、ベースとなるとジャズベースでたまに見かける程度、プレシジョンべースの色モノに出会うことは滅多にありません。また、ちょっと意外ですが、総生産数自体が圧倒的に増えた70年代の方が、60年代よりカスタム・カラーの本数は少ないんだそうです。そもそも標準仕様にカラバリが増えたこと、工業化が進んで個別オーダーに対応しにくくなったんだと想像します。このベースもとびきりレアなソニック・ブルー。1956年製のキャディラックに使われた色で、手許の資料によるとFenderでは1960年から1972年に採用されたとのこと。入手した時から使いこまれたコンディションでしたが、そこから20年近くメインで酷使して、一段と熟女なルックスになっています。

1972 Fender Precision Bass / Sonic Blue (# 374136)

熟女と言えば、数年前から空前のブームです。ちらっと検索するとフーゾクでもAVでもやたらと「熟女」というワードが目立ちます。そういった界隈では逆サバ読みが常態化しているようで、20代のお姉さんが、わざわざメイクを変えて30代半ばを装うなんてのはザラにあるようです。それって、レリックとかエイジドとか呼ばれる、新品のギターをヴィンテージっぽく加工するのと本質的な考え方は一緒ですよね。しかも熟女マーケットも細分化していて、30代、40代、50代、60代以上と傷み方にもグレードと好みがあるらしいです。そこもN.O.S.(New Old Stock)やらRoad Wornやらと傷み方にグレードをつける今のギター市場と似てますね。 おばあちゃんの風俗嬢(!)もいて、けっこう需要があるみたい。何でもハード・レリックが好きな人がいるんでしょうね。

老婆のごとき新品 Fender Rory Gallagher Signature Stratocaster®

トップコートのクリア層が黄変して、ウグイス色のような渋い色味です。クリアがはげた個所から顔をのぞかせるウブなブルーに往時が忍ばれます。あれっ、こういう感覚が熟女ムーヴメントを支えているのかも。

レア度と有難みが比例しない、残念なFenderカスタム・カラ―の筆頭がこのブラックでしょう。実は60年代のブラックは極端に数が少ないらしいです。しかし、70年代中期には標準仕様になったためにブラックのFenderを目にする事が多いこと、更には、そもそもブラックという色にさほどスペシャル感がない事で、一見して「おおっ!」とはなりにくいんだと思います。

1965 Fender Precision Bass / Black  (#L66311)

ネックデイトは1965年の1月。ポジションマークもクレイドットだったり、箇所箇所にプリCBSの色を残しています。下地はホワイトとベージュの2層。レアものには違いありませんが、ダイヤを散りばめたロレックスなんかが好きな方にはおススメできません。キャバ嬢はもちろん、BlackのFenderで感心してくれる一般人は100%いないと断言できます。Black Fenderは、むしろ目立っちゃうと差障りがある職業の方――金融機関にお勤めの方なんかが、周囲にも嫁にも内緒でこっそりローン購入するのにピッタリなカスタム・カラ―です。

費用対効果の高いグッズ

かの西郷隆盛も「驕奢を戒め、節倹を勉め、職事に勤労して人民の標準となり、下民その勤労を気の毒に思ふ様ならでは、政令は行はれ難し」と、派手なカスタム・カラーをいましめる言葉を残しています。

清川栄治 105試合連続無勝利・無敗(1984-1987) 。レア度と有難みが比例しない日本記録達成。

最後にギターを。Lake Placid Blueは1957年のキャディラックに使用された色です。Fenderカスタム・カラーの中ではCandy Apple Redに次いでもっともポピュラーな色、すなわち珍しくないレア・カラー(笑)です。

1971 Fender Stratocaster /Lake Placid Blue  (#303598)

 

 

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PROFILE

代沢五郎 from O.L.H. だいざわ・ごろう/X-RATEDノワールファンクバンド「Only Love Hurts a.k.a. 面影ラッキーホール」通称「O.L.H.」の主催者でありベーシスト。心理学者/ライター。旧名:sinner-yang。著書に『けだものだもの ~O.L.H.のピロウトーク倫理委員会』(ele-king books)がある。