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PlasticBoys 『夢には従わなければならない それは正夢だからだ』 #05 アヴィーチの「SOS」でジュリアン・アサンジは踊る。TAKE NO PRISONERSのスローガンTシャツとマルコム・マクラーレンのボンデージ・トラウザーズを身に付けて

伝説のゲイクラブ「PlasticBoys」の入り口の扉の、三角形の絵の下には、こう書かれていた。“夢には従わなければならない それは正夢だからだ”

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伝説のゲイクラブ、

『PlasticBoys』の入り口の扉の、

三角形の絵の下には、こう書かれていた。

 

夢には従わなければならない それは正夢だからだ

 

 

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 ジュリアン・アサンジからDJへのリクエスト曲はアヴィーチの「SOS」だった。2018年4月20日にオマーンのマスカットで他界したアヴィーチ。彼の死後の翌年2019年4月10日にリリースされた「SOS」は、世界の民族音楽に見られるハーフトーン(日本語ではこぶし)のヴォーカルとリズムで構成された曲だ。

 

 ネイティブインディアン、アイヌ、縄文、ケルト、ホビ、アラスカクリンキット、ネイティブハワイアン、台湾原住民族、マヤ、ケニア、サーミ、チベット、アボリジナルなど、世界の先住民族に引き継がれてきたハーフトーンは、今もなお、世界共通言語である。それを現代の音楽機材でポップに表現している「SOS」は、リリースされるやいなやジャンルを越えてプレイされ、レゲエバージョン、ヒップホップバージョン、ハウスバージョンなど、ありとあらゆるバージョンにリミックスされ、世界中へと広がっていった。

 

 “行き過ぎた資本主義”という悪魔と取引してして富と名声を得たアヴィーチ。彼に取り憑いた悪魔は彼をいつも恐怖におとしいれる。彼はその恐怖からエスケープするためにドラッグをやる。だが、ドラッグの副作用が、さらに彼をダウン地獄へと導く。そして、アヴィーチは永遠の愛を求める。「SOS」はそういう曲である。

 

 アヴィーチの苦悩は、ジュリアン・アサンジの波乱万丈の人生の苦悩と共通する。アサンジは1990年代前半にオーストラリアのメルボルンで、イギリスから伝わったアシッドハウスとセカンド・サマー・オブ・ラブ・ムーヴメントに深く影響を受けた。メルボルン在住のイギリス人が、かつてキリスト教の宣教師がやったように、アシッドハウスとセカンド・サマー・オブ・ラブ教をオーストラリアの人々に伝授したのだ。アサンジは、そのスピリットを引き継ぎ、それを最先端のテクノロジーであるITと統合することによって、世界トップのハッカーとなった。

 

 彼の創設したウィキリークスは、世界中の隠された重要な情報を世界へ配信した。それらは、既得権を持つ者たちに大打撃を与えた。彼らは、ジュリアン・アサンジと彼らの功績を陳腐化し抹殺したいのだ。追い詰められたアサンジは2012年にロンドンのエクアドル大使館に逃げ込んだ。7年もの時が過ぎた2019年にアサンジはエクアドル政府が大使館内に招き入れたイギリス警察によって逮捕された。2012年当時は反米だったエクアドル政府が、選挙に負けて2017年に親米政府へと変わったのが原因だった。

 

 「SOS」が流れ始めた。アサンジがDJブースからダンスフロアへと移動する。

 

 アサンジは、「TAKE NO PRISONERS」と赤くプリントされたペールピンクのスローガンTシャツを着ている。「TAKE NO PRISONERS」とは、「囚われの身で自由は無いが、塀や檻によって安全に守られている刑務所の囚人のような生き方をしない」ということ。つまり、自分の人生を他人任せにしない、他人に依存しないという意味である。現代を生きる我々は、一見すると独立した人間として、自分でお金を稼いで家族を持って生きているようにも見えるが、実はいつの間にか何かにぶら下がって、何かに守られて、安全地帯(Comfort Zone)の中で、ただぬくぬくと生きているようになっていないだろうか。それは、もっと大きな視点で見ると、囚人と同じではないだろうか。「TAKE NO PRISONERS」という言葉には、そうしたメッセージが込められている。

 

 さらに、アサンジはボトムに、1975年にマルコム・マクラーレンがデザインしたボンデージ・トラウザーズをはいている。それは、ダンスをするのに最適化したストレッチ素材に、7色のレインボウの超合金ジッパーが、両方の太ももの裏側と、両方のふくらはぎの裏側に計4本施されたトラウザーである。さらにフロントからお尻の肛門の上部に掛けても同じくレインボウの超合金ジッパーが施されている。

 

 生前のマルコムと話したとき、マルコムは「セックスをする時に裸なのは間抜けに見える。服を着てセックスする方がスタイリッシュだ。だから、服を脱がなくてもセックスできるようにフロントから肛門の上部まで繋がったジッパーを施したデザインをした。それがボンデージ・トラウザーズだ」と言っていた。それを彼の口から直接聞いたときに、まさに「TAKE NO PRISONERS」だと思ったものである。マルコム・マクラーレンの文脈で語られるパンクロック・ムーブメントの本質は「TAKE NO PRISONERS」なのだ。

 

 そして、マルコム・マクラーレンの文脈のオリジナルは、1957年から1972年のシチュアシオニスト・インターナショナル、1959年のキューバ革命、1968年のパリ5月革命であり、それが1976年のパンクロック・ムーブメントへと繋がった。そして、パンクロック・ムーブメントの洗礼を受けた世代が起こした文化大革命が1988年イギリスのアシッドハウス とセカンド・サマー・オブ・ラブだ。それは、イギリスからヨーロッパ中を経由し、世界中へと伝染した。

 

 “行き過ぎた資本主義”グローバリズムとグローバリストに対してのカウンター・アクション・ジャーナリズムであるウィキリークスのスピリッツはここにある。“行き過ぎた資本主義”グローバリズムとグローバリストでは言葉が長いので、親グローバリズムと親グローバリストを短縮形で「親グロ」、それに対する反グローバリズムと反グローバリストを「反グロ」とネーミングする。ちょっと前まで日本の都市部に生息していたが、のちにAIサイバー警察とロボット警察官によって絶滅した「半グレ」とは、言葉の響きは似ているが内容は真逆だ。そのへんはご愛嬌である。

 

 実は2020年末のアメリカ大統領選挙でトランプが再選したあと、アサンジは無罪放免となっていた。アサンジは脱獄したのではなかったのだ。2019年のアサンジの逮捕により民主党と軍産と諜報界の活動が明るみとなった。それはトランプ陣営に有利に働き、トランプ再選の大きな要因となったのである。

 

 無罪放免となったアサンジが真っ先に訪れたのが、ここ、PlasticBoysだ。2019年に逮捕された当時のアサンジは47歳という年齢には見えない老人のような風貌であったが、今はプラチナブロンドの髪を、セックスピストルズ在籍時のジョニー・ロットンのようなショートでパンキッシュなヘアスタイルにまとめている。そして、「TAKE NO PRISONERS」と赤くプリントされたペールピンクのTシャツに、7色の超合金レインボウジッパーのボンデージトラウザーズをはいて、アヴィーチの「SOS」が流れる中、アボリジナル特有の酔拳のようなダンスをしている。彼の周りを取り囲んで眼差しを向ける若き狼たちに、サスティナブルな社会をダンスで語り継いでいるのだ。

 

 限りない人間の欲望は、社会を、自然環境を、破壊する。人間が狼を絶滅させたことによって鹿が増殖し、環境破壊を起こしたイエローストーン国立公園もそうだった。生態系にはバランサーとしての狼のような存在が必要なのだ。たとえばそれは、ギィ・ドゥボールであり、チェ・ゲバラであり、マルコム・マクラーレンであり、ジュリアン・アサンジである。あるいは、社会の中でミュージシャンや、アーティストと呼ばれている狼たちである。悪魔と取引し、親グロの手先となったミュージシャンやアーティストたちが跋扈する現代社会、そのカウンターとしての狼の育成機関が、ここPlasticBoysなのだ。AIやロボットと共存する時代になり、前時代で教育された計算や暗記やルーティンの価値は暴落した。それらは、AIとロボットによって代用されたからである。

 

 

勘定か? 感情か?

損得か? 尊徳か?

AIか? HUMANか?

The Choice is Yours.

選択はあなたの中にある。

原始時代の我々の祖先が

火や刀をパートナーとして生き残って来たように、

我々はAIやロボットをパートナーとして

生き残っていけるのだろうか?

親グロの台頭によってもたらされた“行き過ぎた資本主義”は、

社会と環境を破壊し、無秩序をもたらした。

マルコム・マクラーレンは言った。

 

「Cash from Chaos」

 

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PlasticBoys 〈夢には従わなければならない それは正夢だからだ〉 2018 acrylic on paper. 150×112cm

 

 

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〈MULTIVERSE〉

「リアルポリアモリーとはなにか?」幌村菜生と考える“21世紀的な共同体”の可能性

「REVOLUCION OF DANCE」DJ MARBOインタビュー| Spectator 2001 winter issue

「僕たちは多文化主義から多自然主義へと向かわなければならない」奥野克巳に訊く“人類学の静かなる革命”

 

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PROFILE

PlasticBoys プラスティックボーイズ/幌村菜生・村山悟郎・有賀慎吾・DJ Marboによるダンスバンド

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