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HAGAZINE

PROLOGUEⅡ 
Written by Hidenori Haga

 

 芳賀書店にはおよそ80年の歴史があります。あと20年ほどで創業100周年です。

 私はそうした長い歴史を持つ芳賀書店の三代目として生まれ、これまで生きてきました。その上で感じたことは、歴史があるということは、時にありがたく、また時に煩わしくもあるということです。

 芳賀書店の歴史から頂いたものの中には、たくさんの素晴らしい財産がありました。しかし、その財産の一方で、長い歴史を持つがゆえの「業」のようなものも、私は一緒に受け継ぐことになりました。ここで詳しく語ることはいたしませんが、そうした「業」によって、私自身、つらい思いをすることも少なくありませんでした。だから、私は歴史から頂いたもののうちの財産と呼べるものは膨らまし、一方で業は無くしていくことこそが、三代目としての私の役割だと考え、これまで働いてきました。このようなつらい思いはもう誰にもさせたくない、その気持ちを原動力に今の私は動いています。

 ここで芳賀書店の歴史を少し振り返っておきますと、芳賀書店の初代である芳賀章は、出版事業で名を馳せました。もっとも有名なところでは現在は角川書店が版権を持っている寺山修司の『書を捨てよ街へ出よう』。1960年代に青春時代を過ごした方にとっては、芳賀書店はいまだに気骨ある出版社というイメージが強いかもしれません。

 一時は新左翼系の出版社の筆頭とまで言われた芳賀書店を大きく変革したのは私の父、二代目の芳賀英明でした。30代以上の男性なら誰もが知っているだろう「ビニ本」というものを作ったのは、この英明です。その爆発的な流行によって、芳賀書店は一躍「アダルトの殿堂」と呼ばれるようになり、業務の中心を出版社から販売店へと移行させていくことになりました。

 そして、次が三代目の私です。私がしたことは何か。正直言って、私はまだ何も成していません。初代、先代が作り上げてきた芳賀書店を摩耗させることなく活かし続ける、そのためにできることはしてきたつもりです。もちろん、それは歴史を背負うものとして大事なことであり、今後も引き続き取り組むべき事業であることは間違いありませんが、一方で、それだけでよいのだろうか、という思いもずっと抱えてきました。歴史を守ること以外にもすべきことがあるのではないだろうか、あるいは、ただ今の業務だけを続けていくことが、果たして本当に歴史を守っていると言えるのだろうか、という疑問もありました。

 私が芳賀書店を背負うようになったのは21歳のときです。それを機に私の考え方は大きく変わりました。それ以前、私はずっと人の命こそがこの世で一番尊いものだと思っていました。つまりは自分の命がもっとも大事であり、それ以上に自分が守るべきものはないと思っていたということです。しかし、芳賀書店を背負い、自分自身が芳賀書店であるという考えに変わったとき、芳賀書店の命こそが私の命より優先すべきものと考えるようになりました。なぜなら、法人格というものは、正しく健全に運営された場合、永遠に生き続けることができるものだからです。芳賀書店の社長に就任したとき、この法人の命を生かし続けること、それこそが私の使命なのだと、そう思うようになったのです。

 とはいえ、時代は刻々と変化しています。初代が生きた時代、先代が生きた時代、そして私が生きているこの時代は違う。時代が変化しているならば、それぞれの時代にふさわしい芳賀書店の姿があるはずで、芳賀書店を生かし続けるという使命を果たすためには、時代に応じて芳賀書店もまた変化させていく必要があるでしょう。

 初代、先代、そして80年の歴史の中で芳賀書店の運営に携わってくれた方々、あるいはその家族、または芳賀書店を応援してくださったファンの皆さま、そうした全ての人々の思いに、本当の意味で報いるためにはどうすればいいのだろうか。そのためには芳賀書店を次のステージへと進めていく必要がある。ずっとそのチャンスを待っていました。そして、ついに準備が整い、そのための第一歩として立ち上げさせていただくのが、このHAGAZINEです。

 だから、私にとってHAGAZINEとは、ある意味で私のエゴそのものです。すなわち、私が背負うべき、私以上のものです。それゆえ、今後、HAGAZINEの発信によってなにか問題やトラブルが引き起こされた場合、その責任は、すべて私にあります。あるいは「書いたものの責任は自分で取る」と仰られる執筆者の方もいるかもしれませんが、そこを譲ることはできません。どうか私のワガママをお許しください。

 もちろん、ただ芳賀書店にとって新しいことをする、だけでは創る意味がありません。媒体を作るからには真剣に時代を見据え、日本の将来にとって、いや、世界の未来にとって、価値のあるものを創る必要があります。私もまた代表としてのみならず、一人の論者として、私の考えていることをHAGAZINEにおいて発していきたいと思っています。私を含め、HAGAZINEに参加してくれる仲間たちはみな求道者です。ただし、すでに答えを持っているわけではありません。みな簡単に手に入る答えに満足することなく、真剣に答えを探し続けながら生き続けている人たちであり、そうした人たちの生き様には、人を刺激する熱があるものです。私はそうした熱をとても大事にしています。

 現代という時代は、人々が豊かさを求めすぎた結果、逆に貧しくなってしまっている時代であるように私は感じています。本当の豊かさとはなんなのか。本当に大切なことはなんなのか。HAGAZINEで問うてみたいと思っています。

 最後に、私は文章を読むことは、その書き手の人生を疑似体験する旅であると考えています。今後、HAGAZINEには多くの書き手が登場し、多くの文章が掲載されることになるでしょう。私が皆さまに望むことは、HAGAZINEを通じて皆さまに新しい旅をしてほしいということです。その旅を皆さまにとって良いものとする自信もありますし、そのためにも私たちは今後も邁進し続けようと思っています。私はいたって真剣です。どうか末永くお付き合いください。

 それでは皆さま、お待たせいたしました。HAGAZINEの世界へ、ようこそ。

 

2019.3.21 芳賀英紀(代表)